11月21日(日)10:00~13:00
講師:黒田貴子さん
テーマ:韓国・朝鮮と日本のいま
<参加者>28名
学生9名 小学校5名 中学校4名 高校5名 特別支援学校3名 大学2名
講師の感想
今回の講座で、中学校での日本軍「慰安婦」問題の授業についてお話ししようと思ったのは、若い方たち
から「こういうことを、授業で取り上げて良いのですか?」という声を何回か聞いたためです。
この授業は、なんとしても生徒たちに伝えたい授業です。でも、若い方たちが躊躇うように、この授業を
することに対する攻撃もあります。植民地支配を巡り、加害者側の国にとってはいちばん教えて欲しくない
ことでしょう。だからこそ、この事実をきちんと生徒たちに伝えることが必要だと思って、40年近くこの授
業を続けてきました。お話ししたように、性教育へのバッシングから、この重い事実を思春期の生徒たちに
伝えることが、難しくなって来ている面もあります。様々な配慮をしながらていねいに伝えることが必要で
す。
今回、講座に若い方たちが大勢参加して下さいました。初めて知ることに戸惑った面もあると思いますが、
後から寄せられた感想では、この授業を自分もやりたいと思った、知って良かったというお声が多く、嬉し
く思いました。
参加者の感想(一部)
*南京虐殺など、事実としてあったことは過去の講座等でも話し合いになりわかってはいましたが、最近の
日韓の国同士の話し合いは対話ではなく、日本は解決済みの一点ばり、韓国は世論を意識した日本バッシ
ングとどこまでも平行線を辿っていてなんとかならないものかと思いながらもニュースを消してしまって
いた自分がいました。しかし、今回の話を聞いて無関心こそこの問題を助長しているのではと感じ、まず
もう一度関心を持つこと、自分に出来ることを考え、一歩を踏み出し進み続けることが大切だと気づくこ
とができました。過去日本が行ったことを知り、どのように韓国を含めた周辺国の人々と共に歩んでいく
のか、自分自身にも問いかけながら生徒に伝えていきたいです。
*黒田先生、ありがとうございました。従軍慰安婦の問題は、小学校で授業として扱うには抵抗のある内容
であると感じましたが、それと同時に、ずっと避け続けているわけにもいかないことでもあると思いまし
た。また、「やり辛いからやらない」、「教えにくいから教えない」ということが積み重なっての誤解や
無知が、新たな間違いや解決に向けての根本的な取り組みへの妨げにもなっているのではないかとも思い
ました。「少女3」の詩など、聞いているだけで辛くなるようなものも多くありましたが、生徒の1人の感
想にもあった「学ぶことができてよかった」という感想が全てだと感じました。教師が正しく学ぶこと、
教える術と勇気を持つことも大切だと思いました。
*慰安婦問題についても、性教育についても、大事なことなのに授業の中で取り上げられることはあまりな
いと思います。大学で石出みどり先生の授業を受けている中で、慰安婦問題についての話が出てきた際、
「この話は中学生に話すのは、なぜか難しい気がする」というモヤモヤを感じていたのですが、性教育の
不足が原因だったのかと、今日のお話を聞いていて、気が付きました。おそらく、現状の性教育の中で慰
安婦問題について取り上げ、「レイプ」という言葉を使っても、知らない生徒や面白おかしくとらえる生
徒もいるのではないかと感じます。歴史教育、そして性教育の在り方について、もっと学んでいかなくて
はと感じました。
慰安婦問題や河野談話自体、中学校の歴史教科書に載っていることの方が少ない中で、先日の山本先生の
お話の中で出た「教科書を教える」中で足りない部分を教科書外からも教えるということを思い出しまし
た。使用している教科書以外から教える事は、バッシングや管理職・保護者との関係にも不安があると思
いますし、私自身、教師になったときにすぐにできるかといえばおそらくできないと思います。しかし、
経験を積む中で、本当に伝えたいことを生徒に伝えられる教師になっていきたいと思います。今回の講座
に参加できてよかったです。次回の講座もぜひ参加したいと思います。
*本日は授業において日本軍「慰安婦」問題をどのように扱っていくか、深めることができました。私事で
すが、明日から担当している世界史A授業が「第一次世界大戦」、日本史B授業が「第二次世界大戦」にそ
れぞれ入ります。当初の授業計画として日本軍「慰安婦」問題は「政治的中立性」の問題もあり、割愛し
ておりました。しかし、本日の社会科授業づくり講座に参加し、様々な史資料を用いて、日本軍「慰安婦」
問題と真正面から向き合う必要性を感じました。また、中学生に向けてあるいは高校生に向けての日本軍
「慰安婦」問題授業をする場合、どのような共通点・相違点があるか、中高連携社会科教育の観点からも
考えてみたいと思います。私も「研究的実践者」を目指して授業実践・教材研究に取り組んでいきたいと
思います。
*本日は貴重なお話をしてくださりありがとうございました。今回の講座の中で、黒田さんのお話、他の教
員の方々のお話を聞けて非常に充実した時間を過ごさせていただきました。お恥ずかしながら、私自身日
本軍「慰安婦」問題(以下、慰安婦問題)や徴用工問題についてほとんどのことを知りませんでした。他
の学生の方がおっしゃっていたように教科書で慰安婦問題に関する箇所はほとんどありません。山川出版
の日本史の教科書を見返してみましたが、注に記載があるだけでした。高校の日本史の授業で教わった記
憶はありません。しかしながら、これから教員として慰安婦問題を生徒に教える以上、そんな言い訳は通
用しません。黒田さんの授業実践を聞き、生徒のリアクションを見ていると、慰安婦問題を教えてもいい、
むしろ教えるべきだと思ったので、大学の図書館等で調べてみようと思いました。
また、慰安婦問題をはじめとして軍国主義期日本の諸政策は目をそらしたくなるようなものばかりです。
つい右翼的な、修正主義的な歴史観を持ってしまいがちです。直視するのがつらいのならば、まずはより
マイルドな資料を使うでもいいし、その他工夫がいくらでもできるということを講座の中で学びました。
大切なのは直視できない現実・歴史を「知る」か「知らない」か、と二極化させるのではなく、「少しず
つ知っていく」という選択をとることだと思います。生徒の状況に合わせた授業・扱う資料の選定ができ
るよう、教員としての力量を高めていきたいと思います。
授業の導入をどうするかが私にとってのホットなテーマだったため…(笑) 黒田さんのほかにも現場の
教員の方々の意見を拝聴できて非常に考えさせられました。先生と生徒が向かい合うような関係性ではな
く、同じ関心に向かっていく、共に学んでいくような関係性がよいのではないかと、答えのようなものが
得られました。経験の浅い私ですが、自分なりに経験を伝えられるような導入教材を探してみようと思い
ます。また、次回以降の授業づくり講座にも参加するつもりです。またお話できる機会がございましたら
宜しくお願い致します。
*お母様を亡くされた深い悲しみの中を、若手のためにあのように準備をしてオンラインでも発信していた
だき、ありがとうございました。
Cくんのような生徒さんが、それを出せたというのも、日頃からの黒田さんとの信頼関係があってのこと
だと思います。彼のような生徒さんが、これから自分で学んでいき、周りとの関りの中で「あの時の あ
の授業がきっかけだった」と振り返ってくれる日があったらいいですね。
*昨日は11月の授業づくり講座に参加させていただきましてありがとうございました。
9月講座でお知らせを頂いた時からずっと気になっていたテーマでした。日本軍慰安婦の問題について、
お恥ずかしい話ですが性の問題にも関係することから何となく触れてはいけないような気がして今まで避
けておりました。しかしながら今回先生方のお考えや実際の授業の進め方を教えて頂く中で日本人として
知っておく必要がある問題だということを実感しました。
講座の中で黒田先生が教材の表現や生徒からの想定していなかった意見について、どのように工夫し受け
止めているかということを教えて頂き、重いテーマを取り扱うことの難しさとどのように向き合っていく
かを考える機会になりました。社会科では重いテーマを取り扱う場面が多く、それらをどのように生徒に
伝え考えさせるかが重要かつ教員の腕の見せ所であるように感じます。
先日の山本先生や黒田先生のように生徒の興味関心を引き出し、問題に自然と向き合っていくことのでき
る授業を行えるように精進して参ります。
*お母様のご不幸の中、前を向いて後進のために力を振り絞って下さり頭が下がります。
「伝えたいこと」「伝えなければならないこと」その強い思いを持って教材研究をしていく。その姿から
教師のあり方について改めて学ぶことができました。私などは、一貫したものがなく、その時その時の関
心に合うものをとりとめもなく実践してきたのが事実ですので、黒田さんの一貫した姿勢と実践に頭が下
がります。
若い教師を目指す人たちは、1時間の授業をどう組み立てるのか?ということに関心の中心がありますね。
これだと「○○スタンダード」といって私の市でも行われていますが、形だけまねする実践にすぐ陥って
しまいますね。「何を」というところが軽視されて、教科書をどう教えるかだけに収斂しているのが今の
学校現場ですね。
今回も頑張って若手実践家が運営をしていましたが、頑張ってほしいです。また、機会があれば参加させ
て下さい。
*「歴史地理教育」の6月号に平井先生の実践、9月に藤田先生の実践を読んでいたこともあり、今回の講
座を受けて、より日本軍「慰安婦問題」問題に関する理解を深め、さらなる生々しい現実を知ることがで
きました。
「小学校でどう実践するか」を考えながら聞いていましたが、小学校段階で「性教育」の充実を図ってい
かないと難しいとも思いました。本学の生活科教育法の授業者は、和光鶴川小学校の現職の副校長の方だ
ったので、和光学園の「性教育」の実践も知っていました。それだけに、日本全体の性教育はとても遅れ
ていることを改めて痛感し、その重要性も強く感じました。
黒田さんが「授業づくりの根本」の中でおっしゃっていた通り、これから現場で働く身として「疑問符を
かかげて生き続けていこう」と思いました。
*この授業ができるだけの授業の積み重ねがなされているのだろうということを強く感じる実践でした。内
容としても、教材としても、難しいテーマであると感じる単元です。慰安婦に関して、高校時代気になっ
て自分で調べてみたことはありますが、なかなか要領を得なかったり、親に聞いてもはぐらかされたり、
良くない顔をされたりします。なんとなく、触れてはいけない歴史なんだと感じることがありました。私
が高校の頃の日本史は、ほとんどが受験勉強に対応したものとなっており、慰安婦自体さらっと流れた覚
えがあります。中学校のときを思い出しても、植民地責任だとか、徴用工問題、ましてや慰安婦の言葉は
なかったように思います。今でこそ、このテーマを取り扱うのがいかに重要なことかということは理解で
きますが、そのためには既に知っておかなければならないこと、理解しておかなければならないことが多
くあるようにも思いました。その例が性教育だと思っています。正直、少女3の資料は今の私がよんでも
かなり過激だと感じる部分がありました。中学2年生の私が読んで、果たして理解できたかどうか、その
授業でひどい衝撃を受けながら初めて知ることがあるのではないかなど、様々なことを思いました。Cく
んの言葉は少し極端かなとは思いますが、言いたいことは理解できます。これは中学校の社会科だけでど
うにかなる問題ではありませんが、事前知識や事前学習の重要さからも、社会科で特に取り扱うべき問題
は、その科目だけで完結できるものではないと強く感じました。
戦争での歴史教育は特に平和教育や権利教育の観点でも考えるべきものだと思います。植民地責任という
国際関係からも考える必要があり、本当に課題だらけだな、考えなければならないことが多いなという気
持ちでいっぱいです。私は戦争の悲惨な状況を様々な映像、文献からでも、あぁ嫌だなぁと目をそむけた
くなります。だからこそ学ぶ必要があるのですが、どうしても雰囲気が暗いものになってしまうんじゃな
いかなどと思ったりしました。黒田先生の授業実践では生徒が言いたいことを言える雰囲気があり、活発
に発言が交わされていたという印象があります。先生の雰囲気や先生と生徒との関係性がなせる業のよう
な気がしつつ、それだけ生徒が考えられるような授業であること、資料提示や発問がなされていることに、
私もやってみたいという気持ちになりました。
講座のなかで、韓国との関係を渡来人のところから授業でしかけていくという趣旨のことをお話していた
のが印象的でした。歴史は繋がっている。それを理解して授業は行われなければならない、ということを
強く感じた言葉でもあります。私は山本政俊先生に教えてもらっている学生ですが、授業で「南蛮貿易」
が出てきたときに、四夷について触れてもらいました。あの単元ではスペイン・ポルトガルがやはり教科
書でも色濃く描かれていますが、中国の思想が日本に反映されているという事実に、また歴史のつながり
を感じました。教師自身深く学んでいることが本当に大切です。そうでなければ、つながりをもたせた歴
史教育はできないと思うからです。それをまた実感した講座となりました。
講座を通して(司会:角之倉)
今回は、たくさんの学生さんや様々な校種の先生方にご参加いただき、有意義な時間を一緒に共有するこ
とができたことにとても感謝しております。
11月講座では、現実にまっすぐと向き合い考えさせられる時間でとても良い学びになりました。
日韓関係について、ニュースで見ると、反日や親日という言葉や賠償金であるとか、様々な問題が報道さ
れています。そんな中で私が一番知っておくべきことは、戦争という時代の中でつらい経験をしてきた人達
のことがいることや、戦争がもたらすものについて考えていくことなのかなと思いました。
「歴史を知り、学んだことを未来に伝えていく」という言葉が生徒の感想にありました。その歴史は人が
つくっていくものであり、自分たちにとって都合の良いものもあれば、都合の悪い悲しいものもあると思い
ますが、それらを伝えていき、再び悲しい歴史を少しでもなくしていけるように努力することが大切だと思
います。そして、「今を生きる私たちができることは何かを知り、考えて取り組めばよいのか」を児童生徒
に伝えていくことが社会科教員の仕事の一つであると考えたため、生徒たちにその思いを伝えられるような
授業を作っていけるように精進していきます。ありがとうございました。
次回の授業づくり講座も、是非たくさんのご参加をお待ちしております。よろしくお願いします。