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全国から800名が参加、第70回京都大会を成功させる

 第70 回京都大会は8 月4 日から6 日までの3 日間の日程で同志社中学校・高等学校にて行われま
した。第70 回大会の概要を皆さんから寄せていただいたコメントなどを紹介しながら、報告します。
 同志社中学校・高等学校のキャンパスは、広大な敷地内にICT 設備の整った教室を利用すること
ができ、非常に恵まれた環境の中で大会を行うことができました。全体会や閉会集会をチャペルにて
行いました。全体会前には、非常に厳かなパイプオルガンの演奏で私たちを迎えて下さいました。参
加者の感想の中にも「会場に入ったとたんのパイプオルガンの演奏にびっくりしたと同時に、感激し
ました。『おこしやす』の気持ちが伝わってきました。ありがとうございました。」というものがあり
ました。施設利用に当たって、関係された方々に改めて感謝致します。
 この間、引き続く新学習指導要領を巡る様々な課題・問題、部活動指導を巡る問題、私たち教員の
働き方に関わる課題など日本の教育を巡る情勢は激動の時代を迎えております。また、政治課題とし
ても日本国憲法改正へ向けた動きが取りざたされるなど、予断を許さない状況が続いている中での大
会開催となりました。厳しい情勢の中でも、参加者の皆さんの協力により、非常に豊かな実践交流を
行うことができました。その成果を明日につなげていくことができればと思います。

●全体会には655名が参加!~史上初、チャペルでの全体会~
 全体会は、今までの歴教協大会の中で初めてチャペルでの実施となりました。
 開会前には、同志社中学校・高等学校のご厚意でパイプオルガンの演奏が行われました。パイプオ
ルガンの荘厳な響きがホールに満ちあふれた後、全体会が始まるという素敵な演出となりました。39.5
度という猛暑も含め、これまでにない歴教協大会となりました。
 大会委員長、現地実行委員長、同志社中学校・高等学校長が歓迎の言葉を述べた後に、韓国・全国
歴史教師の会の白玉真会長、南京市第一中学校歴史研究組組長の?泓氏から連帯のメッセージが語ら
れました。白玉真氏は、韓国で重ねられてきた平和の努力と歴教協の理念とは相通じるものであると
強調されました。また、?泓氏は日本に歴史を大事に考え、日中間の対話を追求する先生が大勢いる
と知り、私たちも交流をとおして今の日本についての理解を深めることができ、国境を越えた歴史教
育者の交流がますます有意義なものになっていると述べられました。
 基調提案は「明治150 年から学ぶもの、学んではならないこと」として、山田朗歴教協委員長が提
案がされました。大会速報に掲載された基調報告の概要を再掲いたします。
 「今年は、明治150 年、日本の近現代を振り返り、学ぶ絶好の機会である。この150 年間の歴史に
は、学ぶべきことと、学んではならないこと(反省すべきこと)がある。封建的な秩序や社会制度が
打ち破られ、個人の権利と自由の重要性が叫ばれ、その実現を期す運動が起こってきたことは重要で
ある。反面、学んではならないことは、欧米列強と共に侵略と植民地支配を追求し続けてきた事実で
ある。そして、明治以来150 年間、日本は一貫して異国との軍事同盟下にあり続けている。明治礼讃
の風潮の中身は、この学んではならないものである。150 年の歴史は教育に国家が介入し、教育の自
由を奪ってきた歴史である。国家の教育介入は断固阻止しなければならない。歴教協が掲げる『地域
に根ざした歴史教育』の大切さを再認識し、継承・発展させていこう」と提案がありました。

・「地域実践報告」は『学校・地域から創る平和の文化~朝鮮学校との交流が築いたもの~』と題し
て取り組まれました。
 地域実践報告は、福知山支部の教員が中学校での朝鮮初中級学校との6 年間、京都中高級学校との2
年間の文化祭での交流について報告しました。文化祭は、生徒間の交流にとどまらず、地域住民の参
加により、学校と地域を結んで、民族の相互理解が進みました。
 報告は、映像を交えて行われ、長きにわたるダイナミックな実践の内容がよく分かるものでした。
最後は、中学生・卒業生などによる太鼓の演奏で締めくくられ、実践の持つ底力を実感させるものと
なりました。
 実践報告の後は、「若者ステージ」と題して、京都の若手教員から教員生活や教育についての思い
が語られました。

・「記念講演」は、「『明治150 年』を考える」と題して東京大学の加藤陽子さんから講演をいただき
ました。
 現政権にとって維新とは旧体制の打破であり、維新の賞賛は民主党旧政権を倒した自分たちの賞賛
につながっているという指摘から始まり、戦前の天皇と軍隊の関係、敗戦後の天皇象徴性と退位の問
題についてお話されました。その中で天皇の象徴性は明治時代からすでに現れており、それは内閣を
議会に対して強くしたいという伊藤博文の意図から生まれたという指摘がありました。
 全体会参加者からは次のような感想が寄せられています。
 「地域実践報告=中学生と朝鮮学校との交流のようすがよく分かりました。とくに、2002 年以降
の日韓関係が冷え込むなかでも、交流が続いたことには感動しました。地域に根づいていたからこそ
交流が続いたんでしょうね。若者の声のコーナーがあるのは良いなと思いました。また、かれらの声
をききながら、歴教協も変わっていかなければいけないですね。」(愛知県40 代)。
 「地域実践報告は、まさに地域に根ざし地域の団体・地域住民と結びついた教育実践(教育活動)
であり、たいへん感銘を受けました。これは、先生の情熱と粘り強い取り組みがあったからこそ成し
遂げられたものと思います。こうした実践が全国各地で展開されることを願いつつ今後とも私もその
一端を担っていきたい。」(滋賀60 代)。
 「事務局(実行委員会)あいさつだけではなく、韓国・中国からの研究者のあいさつもあったことが、
大会の方向性を示していて、すてきでした。若者ステージもマイク1 本で話をするだけであるのに、
すごく会場全体に親和的な雰囲気がうまれました。コロンブスの卵的な発想です。」(40 代埼玉)。
 「若者ステージに新鮮さを感じた。映画『万引家族』の監督が作った作品をテレビで見た時のショッ
クに似た新しい波であった。歴教協の中に今の社会現象が着実に入っている。なにか未来があると思
う。」(東京70 代)。
 「『若者コーナー』は良かった。ぜひ今後も若手・若者に焦点をしぼった取り組みを続けてほしい。
加藤講演も興味深いものでした。『150 年』という区切りがおかしいというのは盲点でした。やはり
『天皇』『天皇制』をどうとらえるかが、来年以降問われるのだと思った。」(神奈川県50 代)
 「山田氏基調提案は、私が今、なぜここに居るかを考え直せる、自信を持っていける根拠を明確にし
て頂きました。」(広島県50 代)

●第70 回記念大会全国交流会を開催
 4日6時から同志社中高食堂で交流会が開催されました。分科会で発表するレポートの交換や各自
の近況交流など、歴教協のメンバーならではの話に華が咲きました。
 元京都歴教協会長・井口和起さんの講演では、蜷川虎三府政下での京都での「見える建設と見えな
い建設」のお話がありました。当時の革新的な政治を実現する根底にあった教育の営みに関するお話
は、現在の情勢に当てはめて考えても非常に教訓となる部分があるお話でした。憲法が生きた“見え
ない建設”が、見えなくなってしまわないように、平和と民主主義をどのように生徒と学び合ってい
くのか、問題提起と宿題をいただいたような気がしています。
 その他にも、若者ステージに登場したお二人の方や現地実行委員会大会事務局長の大川さんはじめ、
様々な方々からお話しをいただきました。改めて、歴教協の歴史の大きさを実感する交流会となりま
した。

●多くの充実した実践が報告される
 全体会の翌日からは、二日間かけて分科会が行われました。優れた実践が多く報告され、熱い議論
が交わされました。参加した方々の感想を紹介し、分科会の様子の一端を紹介します。
 「様々な意見をお聞きし、ハッとすることもあり、なるほどと思うところもありました。他の先生
方に様々な意見をいただくことで、今後どのようにしていけばいいのか、こういうふうにしてみよう
と思うところもあり、大変勉強になりました。様々な実践をみせてもらうこともこのような展開をす
ればよいのかと思いました。今後にいかしていこうと思います。」(小5分科会奈良20 代)。
 「研究報告、実践報告ともに充実していました。勉強になりました。討論も充実、活発でよかった
と思います。『歴史は点と点が結びついて線になったもの』が印象的でした。多角的・多面的に物事
をとらえ、さまざまな視点から歴史をひも解いていきたいと思います。」(日本近現代分科会20 代)。
 「今年から小学校教員として勤め始めた私にとって学びの多い一日でした。様々な地域に根づいた
実践をききながら、自分だったらどうしよう、どうやって授業をつくろうか、と考えさせられました。
それぞれの先生の熱意の伝わる発表で、私もがんばらないと!と強く思いました。ぜひ、今回の発表
を参考に実践をしてみたいと思います。」(小学校3・4 年生分科会三重20 代)。
「教員一年目で授業の作り方がまったくわからなかったなかで、今後やってみたいと思う実践ばかり
でした。報告を聞く中で、自分だったらどのような授業を作っていくのか考えていくかを夏休みの宿
題としたいと思いました。」(日本前近代史分科会東京20 代)。
 「初めての参加、初めてのレポート発表ですので、少し緊張がありましたが、とても話しやすい雰
囲気、参加しやすい雰囲気でしたので感謝です。時間が思ったより早くすぎてしまうので、なかなか
話し合いの時間が少なくなってしまうのが少し残念ですがそれだけ討論・話し合いに熱中しているの
だと感じています。」(中学校歴史分科会京都30 代)。
 「小・中・高様々な校種の取り組みを聞くことができてよかったです。『平和教育は戦争のこと』
だけではない、ことに気づかされました。日々の生活の中の差別や社会のゆがみから戦争へ向かって
いく。戦争そのものだけではなく、そういう問題に子どもたちの目を向ける機会をつくることも大切
だと分かりました。自分の周りの先生がしている『人権教育』には抵抗があったのですが、今のお話
を聞いて『人権教育』に対する見方が変わりました。ありがとうございました。」(平和教育分科会
奈良30 代)。
 「遠い地域で頑張っておられる先生が居るのに感動しました。校長先生の参加に感激しました。テー
マが二宮尊徳と聞き、戦中人間は勤勉たれ!という模範でしたから、ぎょっとしましたが、人物がそ
の時代、」その時代で、どのような価値観で利用されるかなどを考えさせられました。」(思想・文化
・文化活動分科会京都80 代)

●地域に学ぶ集いには407名が参加。
 8月5日分科会終了後に地域に学ぶ集いが行われました。京都ならではの集いが開かれ、豊かな気
づきや学びをさせていただきました。多彩なテーマの集いを用意してくださった現地実行委員会の皆
さん、本当にお疲れ様でした。参加者からの感想を紹介します。
「狂言『柿山伏』」参加者
 教員をしながら狂言を学び舞台を踏んでおられるのはすごいなぁと思いました。先生だけあって基
礎を分かりやすく教えられるのは上手ですね。そして狂言師ならではの授業の中に笑いがあるのはお
もしろかったです。
 今のテレビなどの笑いは上から目線な笑いが多いけれども狂言は、上から目線な庶民の笑いですね。
 ネタよりも、所作や声の出し方、間の取り方を磨けば素朴なネタでもどこまでも面白くなるのだと
気付かされました。ありがとうございました。(京都40 代)
「授業で使える仏教の基礎知識」参加者
 仏教というと学校の歴史の授業では、天台宗・真言宗からはじまり鎌倉新仏教の名前、創始者、主
な著書くらいしか学習したことがない。しかも、文化史で扱うところ故に暗記で済ましてきてしまっ
た授業は多いのではなかろうか。仏教の世界はきわめて広く、当時の社会(現在でも)でこれらが受
容され、発展し、分かれたりするなど、様々な事象が存在していることに気がついてはいたが、あま
りそれを深めることもなかったことを猛省している。本日のお話しは、浄土教の知識としてのおもし
ろさを知るとともに、仏教の日本における変遷から見える歴史的なポイントを考えるよいきっかけと
なった。(東京20 代)
「東寺百合文書から京都を考える」参加者
 東寺百合文書の存在価値、今まで途絶えることなく受け継がれてきた理由が分かった。この文書は
残存したが、全ての古文書や史料が残存していないのも事実であり、これ以上、歴史的価値のある物
を残すためには、当事者はもとより、官民が一体となって共有する必要があるのではないかと考えた。
(京都10 代)
 京都がなぜ戦災を免れたのか等、とても興味深い話を次々として頂いて大変面白かった。関西出身
の人間として、京都と奈良の張り合い等笑える話も聞かせて頂き、時間を感じさせない内容のお話し
であった。勿論、主テーマの東寺百合文書についての知識も深めることができた。(千葉50 代)
「市民の歴史から幕末維新期を考える」参加者
 堅実に文書を発掘・整理・翻刻を行い、その町にしかないその町の歴史を描こうとする仕事の価値
がわかりました。京都は町に文書が保管されているということに驚きました。お祭りを大切にしてい
るところは文書保管ができるという話-地域存続、地域を守ることが急務であると思いました。(静
岡50 代)
「旧日本軍中国(旧満州)遺棄毒ガス被害者と日本の医師たち」参加者
 医者の卵が731 部隊を知らない、ということと私たち歴史に関わる者どもが毒ガスの具体的な症状
を理解していない、ということから文系・理系に分けて勉強させず、いかにして両方に広く渡って学
んでいくことが大切か、ということが分かった。そのために、授業をするだけではなく、教科をまた
いだ横断的なカリキュラムを組んでいくことも求められていると実感しました。(埼玉20 代)
 「米軍機地下の京都1945 年~ 1958 年を考える」参加者
 京都に米軍基地があるのは舞鶴の海軍基地のみと思っていたが、36 カ所もあるとは知らなかった
し、基地があることにより、市民生活に大きな影響を与えていたことがわかった。これらのことから
推測して、今自分が住んでいる地域にもこのようなことがあったのか調べてみたいと思った。甘い汁
を吸っていた日本人もいたことだろうと思う。その面も知りたい。60 数年前の出来事が今につなが
ることは深刻だ。(千葉60 代)
 「『ふりそでの少女像をつくる会』の若者が語る現代」の参加者
 20 年を超す長い期間にわたり引き継がれてきた取り組みの全体像を本当にていねいに報告いただ
きありがとうございました。感動しました!平和の文化を創り上げる力は、ここにあると確信するこ
とができました。取り組みに参加するきっかけは、人によっていろいろだと思いますが、今日の報告
をきくと、自分ができることを、自分なりのカラーで、語り継ごうとされていることは共通している
と思います。これは大切にして欲しいことだと思いました。本当にいい時間を過ごさせて頂きありが
とうございました。(京都50 代)
「ヘイトスピーチにどう向き合うか?」参加者
 本当に学ばせていただいた集いでした。自身は、移民の歴史を授業にすることをやっています。日
本人もかつて排日運動を受けた歴史がある訳ですが、単に昔つらい目にあったことと同じことをやる
のかどうかということでなく、そうした歴史をふまえながら“共生”をどうやって子どもたちと学ん
でいくか?様々なことを考える機会でした。(和歌山40 代)

●埼玉大会へ向けて(閉会集会)
 閉会集会では、会場校からの挨拶を同志社中学校・高等学校副校長様からいただきました。同志社
の歴史を含め学園についてのお話をいただきました。京都大会のために多くの配慮をいただき、本当
にありがとうございました。
 続いて、特別報告として神奈川歴教協の若手会員から「Youth Salon って何?」と題して神奈川で
取り組まれている、学生・若手教員のための勉強会の報告があり、今後の歴教協の活動についての問
題提起がありました。
 特別報告の内容も含め、歴教協のより充実したあり方をひろく語り合い実践していくことができれ
ばと思います。参加者からの発言では次の内容の発言がありました。
①高校新学習指導要領と新科目「歴史総合」-歴史認識と近現代教育のあり方を問う
②学び舎の教科書をどのように活用するか-社会科教育法における指導案作成から
③大会テーマ明治150 年に関わって-近現代分科会の議論についての報告
④若手の参加者からの発言
⑤初参加初レポートをされた京都の参加者から
⑥現地学生スタッフの方から
 閉会集会で気づいたこと、学んだ内容を含め、今回の大会で得られたことを多くの方々と共有化し、
今後の歴教協の取り組みや授業実践で、深めていければと考えます。恒例の大会開催地引き継ぎでは、
京都から佐々木酒造の銘酒や京都大会の資料などがエールと共に埼玉の方々におくられました。
 閉会集会の参加者からは、「若者の報告が三つもあり、『つなぐ』が少し見えてきました。引き続き
多くなっていくといいなと思います。」(神奈川60 代)。「若手教員が参加できるように必要なこと
を若い方々自身が考えていることが理解できた。近代化、大衆化、グローバル化を考えていく中大切
なことを過去、現在、未来の3 つを見据えて今後『歴史総合』をとらえていきたい。」(東京30 代)。
学生スタッフの方々はじめ若手の方々のエネルギーに支えられながら多くのことを交流し、学び合う
ことができた大会であったと思います。
 歴教協創立70 周年の年に開催する次回埼玉大会にも、身近にいる仲間(特に若手教員)を誘って
参加し、さらに内容のある実践交流を実現していきましょう。

歴史教育者協議会大会委員会

1

<div class=”hecj_top_page”>
<h1 style=”margin: 0; padding: 0;”>?</h1>
<h3 style=”margin: 0; padding: 0;”>歴教協では、すべての子どもたちが主権者として育っていけるような、楽しくわかる社会科の授業づくりに取り組んでいます。</h3>
<h2 style=”text-align: left;”><a href=”https://www.rekkyo.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/04/e767348a64e676feddf79a23bb16d4f7.pdf”><span style=”text-decoration: underline;”><span style=”color: #ff9900; font-size: 10pt; background-color: #ffffff; text-decoration: underline;”> </span></span><span style=”text-decoration: underline;”><span style=”color: #ff9900; font-size: 10pt; background-color: #ffffff; text-decoration: underline;”><span style=”color: #ff6600; font-size: 14pt; text-decoration: underline;”>第72回全国大会(オンライン)? </span></span></span></a><span style=”color: #ff9900; font-size: 12pt; background-color: #ffffff;”><span style=”color: #00ccff;”><span style=”font-size: 12pt;”><a href=”https://www.rekkyo.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/04/e767348a64e676feddf79a23bb16d4f7.pdf”><span style=”text-decoration: underline;”><span style=”font-size: 14pt; color: #ff6600; text-decoration: underline;”>分科会レポート/つどい一覧</span></span></a>  </span></span></span></h2>
<h2 style=”text-align: center;”>お知らせ</h2>
<p>

</p>
<h2>機関誌「歴史地理教育」最新号</h2>
<div style=”text-align: center;”>
歴史地理教育12月号(No978)‐特集 もっと知りたい 中世の女性たち
</div>
<h2>機関誌「歴史地理教育」増刊号</h2>
<div style=”text-align: center;”>
歴史地理教育11月増刊号(No977)‐地域に根ざし、平和・人権・命をつなぐ
</div>
<h2>最近の投稿</h2>
<p>
</p>
</div>

<声明> 政治と教育の関わり方の原則を確認し新高等学校学習指導要領の検討・批判を広めよう

<声明>    政治と教育の関わり方の原則を確認し

                                                          新高等学校学習指導要領の検討・批判を広めよう

 高等学校学習指導要領の改訂にあたって、歴史教育者協議会は以下の声明を発表します。

 

1 政治が教育内容に介入し生徒の考えを統制してはならない
 政治の教育内容への介入を象徴的に示しているのが「領土問題」の扱いである。「尖閣
 諸島については我が国の固有の領土であり、領土問題は存在しないことも扱うこと」と
 いう趣旨が「地理総合」「公共」の高校学習指導要領案(以下、指導要領案)に記述さ
 れている。これは、中国が尖閣諸島を自国の領土と主張していることを生徒に教えては
 ならない、ということを意味している。
  2014年の「政府見解」を社会科教科書の検定基準の一つにするという改悪以来、これ
 が教育現場に持ち込まれ、すでに小・中学校では教科書にこの趣旨が記述され、学校で
 の運用がさまざまに強いられている。しかし、領土問題でも対立する相手国の主張など
 を学んだ上で、理性的に判断できるようになることが教育の課題である。ときの日本政
 府の見解だけを教え込むことは、指導要領案が多用する「「多面的・多角的な考察や深い
 理解」という学びとも両立し得ない。
 また指導要領案では総則に「道徳教育に関する配慮事項」という項目が設けられ、公
 民科の「倫理」と新設科目「公共」が道徳教育の「中核的な指導の場面」の一つと位置
 づけられた。公民科には「国民主権を担う公民として、自国を愛す」、地歴科には「日
 本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情」を深める、という目標が付け
 加えられた。社会科系の科目を通しての「愛国心」押しつけが懸念される。
  政治権力が教育を利用してはならないという原則は、アジア太平洋戦争の時代の悲惨
 な体験から得たものである。あらためて政治が教育を利用することの怖さを想起したい。
2 学問研究と切り離された教育内容の広がりを危惧する
 「歴史総合」は従来の日本史学習と世界史学習を統合する新科目と言われてきた。指導
 要領案では「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え」と記されている。しかし、
 この指導要領案で扱われる世界を捉える視点はもっぱらヨーロッパ近代社会であり、「世
 界史A」で扱われていたアジア、アフリカなどの、ヨーロッパ近代に組み込まれていく側
 から世界を捉える視点はきわめて弱くなっている。
  また、日本の近代化を欧米との関係を中心的に捉えて高く評価する傾向が強い。たとえ
 ば日露戦争がアジア諸民族の独立や近代化の運動に影響を与えたことを取り上げることが
 例示されており、これは「日本史A」の指導要領にはなかったものである。一面的に日本
 の近代化を誇るもので、「明治150年史観」に通じ、今日の歴史学の研究に基づくものでは
 ない。「歴史総合」は、戦後の歴史教育・歴史学が追究してきた「世界史と日本史の統一
 的把握」といった歴史学習の視点とはほど遠い内容で構成されている。
  中央教育審議会の議論の中で導入された「近代化」「大衆化」「グローバル化」という捉え方
 も、今日の歴史学の研究に基づくものではない。たとえば「大衆化」で第一次・第二次世
 界大戦をくくることにはもともと無理があり、指導要領案にはこの部分だけ「国際秩序の
 変化や大衆化と私たち」と、「国際秩序の変化」の語句が付け加えられている。二つの世
 界大戦を「国際秩序の変化」で捉えることにも大きな問題がある。安倍首相の「戦後70年
 談話」では、日中戦争について日本が「『新しい国際秩序』への『挑戦者』となっていっ
 た」と述べられ、中国への侵略戦争であったことを覆い隠す際にこの語句がつかわれてい
 る。
 この指導要領にもとづいて教科書作成が進められることは避けられない。その過程が密
 室ではなく、多くの教員・研究者などの批判・検討を受けて進められることの重要性を強
 調する。
 歴史教育者協議会は、皇国史観が押しつけられた戦前の歴史教育が、学問研究と切り離
 されていたことを強く反省した歴史教育者・研究者によって設立された。設立趣意書には、
 歴史教育は、「げんみつに歴史学に立脚」して「学問的教育的真理以外の何ものからも独
 立」すべきことを掲げた。あらためてこの創立の理念と経緯を想起し、学問研究に基づか
 ない教育内容が広げられることに警鐘を鳴らすものである。

            2018年3月25日  一般社団法人歴史教育者協議会臨時社員総会

 

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参加してよかった第36回中間研究集会

                                                              第36回中間研究集会報告

1.中間研究集会の開催
 第36回中間研究集会は2018年1月7日、ラパスホール(東京労働会館)を会場に、「『明治150
年』を検討し批判するー2018年京都大会に向けて」をテーマに実施された。午前10:00に開始し、
以下の講演・報告を中心に学び合った。参加者は105名(報告者2名を含む、うち学生4名)で
例年よりも多く、会場は開催時間になっても受付が終了せずに多くの人がごった返すという状況
で開催することになった。講演・報告後は「憲法を生かした学校・地域をつくろう」を討議の柱
に、分散会・全体会をおこない午後4:40に終了した。
 ①講演「明治150年史観を検討し批判する」山田朗氏(明治大学、歴教協委員長) 
 ②報告「新学習指導要領で中学歴史の授業はどうなる?どうする?」倉持重男氏(埼玉歴教協)
 ③報告「4月からの小学校道徳は具体的にこうする~子どもの内面に介入しない指導法と評価」
  宮澤弘道氏(公立小学校教員・道徳の教科化を考える会代表)
 
2.講演・報告などの概要
 山田講演に先立つ開会挨拶では、政府(内閣官房)は「明治150年」をどう概念規定し、どのよ
うなねらいで、どのようなことをしようとしているか、「明治150年」政府広報オンラインをもと
に注意を喚起した。
[政府広報オンライン: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/meiji150/portal/torikumi.html
①山田講演
 山田講演では、改憲問題は歴史認識問題であるとして、改憲論の底流をなす「明治150年史観」
とは何か、歴史修正主義と「明治150年史観」を克服するには何が必要か、ということが語られた。
そのなかで、歴史修正主義と「明治150年史観」を克服するためには、日露戦争認識と日中戦争認
識の見直しの重要性を提起した。そして、歴史認識問題のポイントとして、戦争のイメージについ
ては日露戦争ではなく日中戦争に組みかえることが必要であるとして次の2点を指摘した。
(1)日露戦争について、戦費を米英の外債に依存しその後の財政を制約したこと、戦争は米国の支
援で遂行されたが、その後の日米対立の種を蒔いたことなど、日本人自身がこうした真相・実態を
知らずに過剰に持ち上げていること。
(2)日中戦争については、日本軍兵士が中国各地で繰り返した虐殺・虐待・略奪・性暴力などのた
め、語られない「記憶から抹消された」戦争となっていること。それゆえ、歴教協などによる掘
り起こしが大事であること。
 山田委員長の問題意識と学識の深さを改めて認識することとなった提起と指摘の講演であった。
[山田講演:『歴史地理教育』2018年7月増刊号に掲載予定。さらに学ぶには山田朗『日本の戦争
:歴史認識と戦争責任』(新日本出版社、2017年12月)。『歴史地理教育』2018年1月号より「歴
史修正主義と『明治150年史観』」を連載中(12回を予定)]
②倉持報告
 倉持報告では、これまでの自らの授業実践をもとに、新学習指導要領での「主体的・対話的で深
い学び」という理念は歴史学習の観点からは評価できる。しかし、新学習指導要領での「自国愛」
の押しつけ、教科書の内容などの実態・現実を見ると、期待される「主体的・対話的で深い学び」
は「画餅」となるのではないかと指摘した。そして、地域に埋もれている明治期の平和と民主主義
の先駆者である臼倉甲子造を掘り起こし教材化したことを例に、「生徒や地域の現実」の上に立っ
て現代と切り結ぶ歴史教育・社会科教育を教員自身が創っていくことの重要性を主張した。
 倉持報告は生徒への思い、授業への思いがあふれるもので、若い世代の道標となる報告であった。
[倉持報告:これまでの実践については「『地域』と『史実』―私を救ってくれた二つの歴史授業」
『歴史地理教育』2017年7月増刊号所収)参照]
③宮澤報告
 宮澤報告では、小学校で教科としての道徳が4月から実施、という状況のなかで、現職教員として
「教科された道徳をこんな観点で、こんなことに気をつけ、こう教える」という具体的な提起があっ
た。特に「子どもの内面に介入しない指導法と評価」として、文科省作成教材「手品師」を例に、教
材を全文読み合ってから児童が意見・感想をだしあう「全文読み」ではなく、読み合うのを途中でと
め、その場で「主人公はこののちどうしただろう」などを問い、児童がそれについての意見・感想を
だしあう「中断読み」を提起した。「全文読み」では、児童が様々な受けとめ方をしそれらの意見・
感想をもとに活発に論議をすることよりも、教材の結論に沿って誘導された感想・意見を述べ合うこ
とになりがちであり、「中断読み」をすることで、児童は多様な意見・感想をもとに活発に論議をし、
多様な受けとめ方を認めあうことの大切さを認識するということであった。
 宮澤報告は現場の悩みに応える具体的な提起であり、これまでの実践の質の高さを感じさせた。
[宮澤報告:さらに学ぶには宮澤弘道・池田賢市『「特別の教科 道徳」ってなんだ?』(現代書館、
2018年1月)]
 以後の分散会・全体会では、現代の政治状況、改憲問題、北海道、福島の「明治150年」推進キャ
ンペーンの実態、琉球処分から今に至る沖縄の問題、新学習指導要領と「授業づくり」の関連、道徳
の教科化の根本的な問題などについて、情報交換・意見交換がおこなわれた。

3.参加者について
①例年よりも多い参加の要因
 今回100名を超えた要因として、集会テーマが明瞭であり、
(1)政府の「明治150年」推進キャンペ
ーンへの批判、新学習指導要領、道徳の教科化への不安・関心の高まりに応える企画であったこと、
(2)関東都県歴教協の積極的な取り組み(集会参加のチラシ配布、参加呼びかけなど)、
(3)HPへの早期掲載、歴教協メーリングリストの活用などがあげられる。
②参加者の感想から
(1)山田先生のお話、非常に勉強になりました。特に明治150年史観が日露戦争を賞賛し日中戦争には
沈黙するという問題をかかえていることがよく分かりました。当時の新聞などは日々の授業でも是非
使いたいと思いました。特に「記憶」をどう継承してのかは大切であると感じます。正確であろうと
する歴史に対して、分かりやすいストーリーラインが好まれてしまう。「記憶」をどう生徒に伝えて
いくのかは、教員として考えさせられます(20代)。
(2)歴史教育に関する内容から道徳の教科化に至るまで、様々な内容について考えさせられるお話でし
た。共通しているのは、歴史の授業づくりについても、道徳についても、教員が上からの施策を無批判
にそのまま受け入れてしまうことが最も危険なことなのだと感じました。日々、多忙な中で立ち止まっ
て考え、教材研究に取り組まなければ流されてしまいそうで、自分自身、気を引き締めなければと感じ
ました。勉強不足であることを自覚して意欲的に情報収集しようと思いました(30代)。
(3)宮澤さんのお話は初めてうかがいました。とても分かりやすく「道徳科」の危険性を整理して下さ
いました。現場でも、同僚とどう語るのか、難しいと思っていましたが、よいヒントをいただきました。
本当に参加して良かったです(40代)。
(4)(倉持報告では)新学習指導要領、「改正」教育基本法の悪影響というか「狙い」が浸透してきたこ
とを実感した。地理も公民もとかく「愛国」、主体的とか深い学びという耳ざわりの良い言葉で実態を
隠しているため、一般市民の間には批判はおろか関心さえ生れない。こうして教員は孤立して弱体化さ
せられていく(60代)。
 これらの感想に見られるように、第36回中間研究集会の講演・報告は、市民や現職教員の要望に応え
る内容であったこと、関東都県歴教協の助力により、参加者の多い充実した集会となった。引き続き、
夏の京都に職場の仲間と友人を誘いあうことやレポートを持ち寄ることで、京都大会を成功させよう。

歴史地理教育1月号(No874)-特集・東アジアの未来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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特集 東アジアの未来

沖縄の自己決定権と東アジア 新垣毅
東アジアの未来をつくる香港の若者たち 倉田明子
東アジアの未来を見つめる─歴教協の日韓中歴史教育交流 齋藤一晴
 〈第一六回日韓歴史教育交流シンポジウムin済州〉
   ① 韓国の中高生は、沖縄戦・基地問題をどのように考えたか─公開授業を参観して 若杉温
   ② 高校生が自分のこととして歴史を学ぶ─授業実践報告を聞いて 桜井千恵美
日韓の交流と友好を深める韓国修学旅行 深沢美恵子 

小学校の授業 朝鮮学校初級部(特別授業) 一・二年生と絵本『ソリちゃんのチュソク』を読む─韓国の絵本を使った授業の可能性を考える 木村誠
中学校の授業 公民 北方領土は誰の土地か 古川和義
高校の授業 世界史 アメリカの黒人奴隷制を考える─「支配と従属」を考える授業実践 長澤淑夫 

連載 子どもの目  ▼津波てんでんこ 大見功
窓  ▼東アジアの視点で考える日清戦争・日露戦争 大日方純夫
[新連載]歴史修正主義と「明治一五〇年史観」① ▼歴史修正主義と「明治一五〇年史観」克服のために 山田朗
地域─日本から世界から257 ▼基地の街朝霞から見える日本と世界 中條克俊
君たちに逢えてよかった⑤ ▼スーパールーズソックスと田中正造─「一生に一度の修学旅行」考 佐藤幸二
絵本で知ろう! アフリカの国⑩ ▼「もどってきたガバタばん」 尾崎俶美
世界を歩く102 ▼一味違う韓国案内(13)「光州」 朴星奇〔訳:三橋広夫〕
各地からの便り? ▼沖縄県・琉大社会科研究会 学生から見た「くさてぃ」 神村叶人
歴教協第70回京都大会/「伝統」と「革新」の息づく京都へ① ▼きょうと、あしたと、みらいと─七〇回大会で新しい飛躍をめざす 羽田純一
探訪ミュージアム102 ▼済州抗日記念館(韓国・済州島) 平野昇 
読書室『触発する歴史学─鹿野思想史と向きあう』
      『歴史を社会に活かす─楽しむ・学ぶ・伝える・観る』
      『歴史を学び、今を考える─戦争そして戦後』
      『戦争の日本古代史─好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』
      『《伊東マンショの肖像》の謎に迫る─一五八五年のヴェネツィア』
      『フクシマ6年後 消されゆく被害─歪められたチェルノブイリ・データ』 
授業実践/高校倫理 内面の危機を社会的、歴史的に綴る生徒たち─生徒の内面に「現代日本」の歪みを見る 田中恒雄
授業実践/高校日本史 樺太アイヌの「移住」─樺太・千島交換条約に見る近代国民国家とアイヌ 國岡健
二〇一七年七月増刊号「社会科七〇年 これまでとこれから」合評会報告(上) 実践記録「加害者が被害者になる戦争」から学ぶ 山田規雄 

●写真●伝言板●北から南から─歴教協各県支部ニュース507●今月の動き●読者のひろば●次号予告

 

(決議)道徳の教科化に強く反対し、日本国憲法の精神に立脚した教育を実現しよう

  学習指導要領の「改正」に伴い新しく設置された「特別の教科である道徳」(以下「道徳科」)が、来年度より本格実施より2年早く順次開始されていくことになりました。道徳が教科化されることになったのは、2011年10月の滋賀県大津市で起こったいじめ事件がきっかけとされています。が、実はそれ以前から道徳教育を「充実」させる動きは存在していました。例えば「道徳教育推進教師」を設けたり、『心のノート』や『わたしたちの道徳』を文部科学省が編纂したりしたことはその一例です。にもかかわらず、教科化に踏み切ったのは学校現場に文部科学省などが意図している道徳教育が浸透しなかったためなのです。また、2006年に教育基本法が「改正」されました。今回の道徳の教科化の成立には、この教育基本法が大きな推進エネルギーを与えました。また教育再生実行会議の役割も大きかったといえましょう。両者とも戦争のできる国づくりに邁進する安倍政権下において行われたことに、私たちは目を向ける必要があります。
    では、「道徳科」は今までの「特設道徳」とどこがどう違い、何を狙っているのでしょうか。
    第一に、教科化されるということは、教科書が使われることになります。教科書は学習指導要領に則って作成されます。その学習指導要領に列挙されている20余りの項目(道徳的価値観)が、学習のねらいとなり、教科書を用いて学習することになるのです。新しく作られた教科書が公表されたとき、各メディアは「パン屋」が出てくる箇所に「『学習指導要領に示す内容(伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度を学ぶ)に照らし扱いが不適切』と検定意見がついた」と一斉に報じました。「道徳科」が一定の価値観をすりこもうとしていることが、明らかになったよい例です。このように「道徳科」は、愛国心教育を国家が強要し、自分で判断する能力の芽を摘んでしまう道徳的価値観を学習する教科なのです。
    第二に、評価が行われます。評価の仕方は数値化することは避け、文章による記述に留めると説明されています。しかし、その記述の仕方は、学習活動の様子を書くのではなく、子どもの変容に力点を置いて行うように説明されています。教科になるということは、評価規準が作成され、それに照らし合わせて評価がなされます。その評価規準が、すでに特定の道徳的価値観を含んだものになっていることに目を向ける必要があります。つまり、特定の道徳的価値観に照らし合わされた評価が行われるということになるのです。
    第三に、「筆頭教科」としての位置づけがなされます。2017年6月に公表された『小学校学習指導要領解説総則編』には「道徳教育推進上の配慮事項」という節が設けられて、全体計画の作成から各教科・外国語活動・総合的な学習の時間・特別活動の教育活動にいたるまで道徳教育との細かな関連が懇切丁寧に記述されています。「道徳科」実現に関わった委員の一人は、改正教育基本法の教育の目的の一号に書かれていることは「知、徳、体は並列ではなく(中略)人間として求められる道徳的価値意識を培う徳の教育が基盤となって、知育、体育がある」と述べています。教育活動全体が、「道徳科」を中心とした道徳教育の理念を上位において展開されようとしているのです。
    教育勅語の内容を再評価し教材化することに何ら問題も無いとする政治家の発言も合わせて考えると、「道徳科」を中心とした新学習指導要領下の道徳教育は、戦前の修身が果たしてきた役割を担う存在であるといえましょう。私たちは、これから展開される道徳の教科化に伴って行われる道徳教育に強く反対するとともに、日本国憲法の精神に立脚した主権者を育てる教育の実現を決意します。

2017年8月4日           一般社団法人歴史教育者協議会 会員集会

(決議)9条改憲を許さず、憲法の平和主義を守り育てる教育実践に取り組もう

    安倍首相は施行70年の憲法記念日の5月3日、「日本会議」系改憲団体の集会に改憲を主張するビデオメッセージを送るとともに、『読売新聞』紙上で「首相インタビュー」に応えるかたちで9条改憲について具体的な見解を明らかにしました。その主な内容は、憲法9条1項、2項を残したまま、新たに自衛隊の存在を明記する第3項を追加するというもので、この改憲を東京オリンピック・パラリンピック開催を期して2020年に施行したいと時期までも言及するものでした。7月2日に実施された東京都議選では自民党は歴史的な惨敗という結果になりました。これは安倍首相による9条改憲に反対する世論を示すとも言えますが、首相は改憲案を今秋召集される臨時国会には提案するという都議選前の姿勢を崩そうとはしていません。9条改憲をめぐって、かつてなく重大な局面を迎えています。
    憲法尊重擁護の義務を負う行政府の長たる首相が公然と改憲を主張すること自体重大な憲法違反であることは勿論、オリンピックを政治的に利用するという点でも五輪憲章に反する行為で許されません。しかも、日本国憲法の原理の一つである平和主義を破壊しようとするものであり、歴史教育・社会科教育の中で平和の価値を何よりも大切にし、日本国憲法の平和主義をさまざまな形で実践し、子どもたちとともに学んできた歴史教育者協議会として見過ごすことのできない事態だと考えます。
    国民の中に自衛隊を肯定的に評価する傾向が強まっていることは事実でしょう。これは2011年の東日本大震災などでの自衛隊の災害救助活動を多くの国民が見聞した結果だと考えられます。しかし、今問われているのは、国民が認めるとされる災害救助の自衛隊を憲法に位置付けるか否かではありません。2014年、安倍政権はこれまで政府自身憲法9条の下で認められないとしてきた集団的自衛権の行使を閣議決定によって容認しました。翌2015年、日本が攻撃を受けなくても、地球上のどこででもアメリカが戦争を始めれば、自衛隊はその「後方支援」をおこなうとした安保法制の成立を強行しました。こうして海外でアメリカとともに戦争をおこなうことを安保法制で認めさせた自衛隊を、次は憲法の中に位置付けようとしています。自衛隊が戦力不保持、国の交戦権否認を定めた9条2項と両立しないことは明らかです。世界有数の軍事力を保有し、地球上どこででも活動する自衛隊が憲法に位置付けられれば、9条2項は空文化されることは明らかです。それは、とりもなおさず自衛隊が9条の制約を取り払われ、事実上軍隊として海外で活動することにほかなりません。
    日本国憲法は、国際紛争を解決する手段として戦争を放棄し、一切の戦力を保持せず、国の交戦権も認めない、日本の安全と生存は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持するのだと人類の理想を高く掲げています。私たち歴史教育者協議会は、これまでも保守勢力による改憲策動に対してたたかってきました。9条改憲を許さず、日本国憲法の平和主義を守り育てる教育実践に取り組み、改憲を許さない運動を全国で展開することをここに決議します。

2017年8月4日 一般社団法人 歴史教育者協議会会員集会

全国から869名の参加。第69回神奈川/関東大会、成功裡に終了

  以下の報告は、大会の一端を記述しただけなので、詳しくは、大会増刊号を参照してください。

●今大会は、川崎市にある法政大学第二中高等学校の木月ホール(1300名収容の大ホール)と各校舎で行われました。

●毎年行われる大会での全体会は、「現地実践報告」が1つの売りになっています
  今年は、『君たちには話そうー甦る登戸研究所~足元を掘れ、そこに泉わく~』と題して報告されました。
  神奈川県川崎市の明治大学生田キャンパスにあった旧陸軍「登戸研究所」を、当時の法政大学第二高等学校の生徒たちが、歴史教育者協議会の会員であった社会科教師の指導によって掘り起し、その後は、市民たちがその保存運動に取り組み、今は、「明治大学平和教育登戸研究所資料館」という立派な施設になっています。その全経過を、取り組んだ本人をも交えての朗読劇で表現した報告でした。
  「高校生の実践報告が印象に残りました。地域の身近なところから疑問をもち、地域の方とつながりながら学びを深められていることがとてもすばらしいと思いました。」(京都府30代女性)を始め、多くの感想が寄せられました。
  また毎年、様々な方をお呼びしての講演も楽しみの1つです。今大会の講演は、テレビで活躍されている金平茂紀さんから「あるテレビ記者が見た日本の今・媒体・教育」と題してのお話しでした。この講演にも多くのコメントが寄せられましたが、その中から1つ紹介します。「経験豊富な金平さんの話は、一瞬もゆるむことなく話が続き、楽しくも緊張感をもって聞くことができた。今という時代と状況を切り取る姿勢がすばらしいと感じた。授業も同じではないかと昔の記憶と重なった。素晴らしいプレゼントだった。」(千葉県60代)

●各分科会での、充実した実践が報告
  各分科会は、8月5日、6日の2日間を掛けて、木月ホールから隣接している法政大学
第二中高等学校舎で行われ、多くの充実した報告が行われました。
  今大会では、学生スタッフの方々の分科会参加を位置づけ、その学びも重視して取り組まれました。参加した若手・学生スタッフの方々の感想をいくつか紹介します。
・第4(世界)、第5(憲法と現代の社会)に参加しました。
 憲法制定70年というところで、今一度憲法が受け入れられた喜びに触れ、それを理解した上で改憲論議を展開する必要を感じました。
・高校分科会
 様々な授業実践を学びましたが、実践以前に社会科とは何かを考える良い機会になりました。「社会科を自分のモノにできないと意味がない」とある先生の発言を聞いて、私は社会科とは人間一人一人が自分らしく、よりよい人生を送るための教科だと思いました。社会科だけに限った話ではないですが、生徒にとって人生のツールとなるような発見と出会わせることが教員にとって大切なことだと感じました。
・前近代分科会
 私自身、前近代(日本中世史)を勉強しており、直接の動機もそこにあったわけですが、正直なところ、ここまでたくさんの多様で深い学びの授業実践があるとは予想のはるか上でした。地域資料の活用、文献資料やモノ資料を通した生徒への問いかけ、歴史的事実を我がこととして捉えられるような仕掛けづくり、などなど、どのご報告からも、教育現場での、試行錯誤の一端を教えていただきました。
・高校分科会B
 深い学びのためには、形としてデスカッションや、グループワークをやることが大事なのではなく、その活動に見合った少し難しい課題をこちらで設定することが最も重要なのだと、改めて実感しました。

●地域に学ぶ集いは、407名が参加
 この「地域に学ぶ集い」も、その時々の大会開催地にまつわる様々な歴史的内容や現在の問題点などが学べるものとして開催されてきました。今大会では、8月5日(土)分科会終了後に、地域に学ぶ集いが本部企画3講座を含め13講座が行われ、「学べて良かった」等々の感想が寄せられました。その1部を紹介します。
・小田原城と城下町
「私は小田原城に行ったことがなく、今回の講座は興味深く聞くことができた。特に遺跡から様々なことが分かるのは面白いと思った。機会があれば小田原城に行ってみたい。」(東京都・男性・20代)
・19世紀半ばの横浜
「日本の裏の歴史だと思います。大変有意義な講義でした。ありがとうございました。世話人の方々、お疲れ様でした。」(神奈川県・女性・20代)
「なかなか教科書には載らない歴史ですが、近世から近代にかけての社会システムを考える上で、無視できない大切な視点を提示していると思った。」(埼玉県・男性・50代)
・横浜中華街の歴史と華僑の歩み
「ずっと疑問だった山手中華学園と中華学院との違いが分かってよかったです。もっともっとお話聞きたかったです。ありがとうございました。」(神奈川県・女性・10代)
「興味深く拝聴できました。横浜中華街が、華僑と日本人が作ってきたという話が、印象深かったです。初めて中華街についての話を聞くことができました。時おり訪れる中華街が、より身近に思いました。」(東京都・男性・50代)
・安保と米軍基地問題―横須賀・厚木・米軍機墜落
「横須賀の街について、また自衛隊や米軍について、ニュースではなかなか流れない情報を知ることができ、学ぶことが多かった。平和運動を続ける鈴木さんの姿にも感銘を受けました。」(京都府・女性・30代)
・貧困と格差への取り組み
「自分が病気をして休職した時に、このままずっと復職できなかったらどうなるんだろうとずっと不安だった。普通の人が病気や親の介護、リストラなどで離職するとあっというまに坂から転げ落ちるように困窮する。だから自分も薬を大量に飲みながらやっと復職した。歴教協にいらっしゃる先生方のようないい授業をする体力もない。だけどこの困窮者の気持ちはよくわかる。こんな教師でいいのかと思うが、生活するため、お金の為にはどんなに苦しくても働かなければならない。定年を65歳にするとか、年金を70歳にするとか絶対反対である。こんな日本は間違っていると思う。」(埼玉県・女性・50代)
・子どもたちの今―川崎中1死亡事件を考える
「私は現役を離れ、地域で活動していますので、地域の子どもたちとどう向き合うべきか参考になりました。私は教員としては無力で、生徒の困難を知りつつ、できたことは彼らの話を聞いてあげることだけでした。親も大変な状況にあり、10代の子がこんな重荷を背負わなければならないのか、と呆然とするばかりでした。地域の中で子どもにどう寄りそっていけばいいのかと悩んでいます。」(神奈川県・女性)
・ヘイトスピーチ 出合い直しませんか?
「正義とは一体何なのかと考えさせられました。警察は市民を守るものなのでは…。ヘイトスピーチをするのも確かに市民ですが、これは人権侵害であり、言論の自由は通らないと思います。このような状況なのに、仲間がいることが素晴らしいと思いました。やはり、学校や地域で根強い人権教育がなされているのだと感じました。「規制でできないのは根絶ではない」「先生がおくすることなくヘイトスピーチ反対を訴える」という言葉が心に残りました。その通りだと思います。共に闘いたいと思いました。」(京都府・女性・30代)
・授業が面白くなる地域資料の使い方
「地域史の教材研究に力を入れたいと思いました。葛飾・荒川区あたりで勤務しておりますので、幅広い視点で教材を見つけるために、街を歩いてみます。本日はありがとうございました。」(埼玉県・男性・20代)
「社会科を学ぶ上で、地域資料の重要性について学ぶことができた。また、歴史を教える上で教員自身が資料室や博物館を利用して、授業を構成することも大切だと思った。」(神奈川県・男性・20代)
・関東大震災下の中国人虐殺
「知って勉強しなくてはいけない歴史があることに気づかせてくれる“集い”でした。人間が一歩まちがうと集団で何するかわからないことを知性と理性でのりこえていかないと…と思います。」(福岡県・男性・50代)
「何故朝鮮人とともに中国人がたくさん殺されたのか、少しだけわかったような気がします。これから自分でも調べてみたいと思います。」(千葉県・男性・60代)
・東京湾臨海部の開発を考えるーオリンピック施設や豊洲市場問題の背景
「まだまだ勉強不足であったが、そのような私でも、難なく聴けるお話だった。東京都のことだからと言って、無関心な自分で終わらず、これからも学び続け、ニュースを追い情報を仕入れ、自分自身の意見を持ち続けたいと思う。」(福岡県・男性・20代)
「臨海部は社会科見学でよく使うが、その目的や歴史は理解していなかった。不透明な部分が多く、メスを入れなければならないところに入れない現状が腹立たしい。その中で納得いかぬままオリパラ教育をやらなければならないことに不満を感じる。」(東京都・男性・50代)
・教科書問題―育鵬社版教科書と「道徳」教科書を考える
「これだけ明らかに問題のある記述がされている育鵬社の教科書。だれが見ても課題は明確なのに、全国的な報道として取り上げられていないことが恐ろしいと思った。本当に子どもたちのことを思えば、明らかな偏りのある教科書は選ばないのではと感じた。今回、歴教協の全国大会に来たからこそ、学ぶことができたが、一般の教員はほとんどこのような現状を知らないのではないかと考えると、私たち現場の教員がしっかりと学習し、正しい知識をつけていかなければと思う。」(福岡県・男性・20代)
・日中授業交流―授業に生きる力をみなぎらせる金陵中学における歴史研究の概況
「中国の歴史教育が体系的に理解できた。」(東京都・男性・30代)
「中国の歴史教育の概況を知る機会を得て、とても嬉しかったです。惜しむらくは若い人が殆どいない?ですね。(女子学生がひとりいらっしゃったのは本当によかったです)歴教協の若い先生にもきいてほしかったと思います。それを啓発するのは我々のやくわりかな。非常感謝老師的訪問日本、参加歴史教育者協議会第69届全国大会(神奈川大会)。清老師的明年也来日本参加第70届全国大会(京都大会)老師的一路平安~!」(京都府・女性・30代)

●閉会集会でも「現地中・高・大」の実践報告と京都へのバトンタッチ
  今回の閉会集会は、神奈川実行委員会の希望もあり、中学校・高校・大学での地域の掘
り起し実践報告に、最後まで学ぶことができました。
  恒例の引き継ぎでは、神奈川大会実行委員会から京都大会実行委員会への「鳩サブレと大会資料」などが手渡されました。
 このホームページ「大会報告」をご覧になった方々が、ぜひ来年の京都大会にお出で頂くことを祈念しています。