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第68回歴史教育者協議会沖縄大会 “沖縄を見て、聞いて、考えた大会”

1.「オール沖縄」に学ぶ
     沖縄大会は、8月5日~7日に名護市民会館・琉球大学を会場に開催し、615
名の参加を得て成功裏に終了しました。現地実行委員会とネットワーク、全国
の会員の協力のおかげです。ありがとうございました。
    沖縄大会では、「沖縄から安保と民主主義を問う」が追求されました。全体
会特別報告の稲嶺名護市長は、県民が示した新基地建設反対の民意は、法治国
家として最大限尊重すべき重要事項と訴え、新基地建設に県民が反対する理由
を理解するためにも、自らの目と耳と足で辺野古の現場を体感し、子ども達に
伝えて欲しいと述べました。東村高江の住民からヘリパッド工事を強行する現
地の緊迫した状況が報告されました。   
    シンポジウムのテーマは「日米安保体制に抗う沖縄民衆のたたかいに学ぶ」。
古堅元議員から伊江島「島ぐるみ闘争」が、新崎沖縄大学名誉教授から戦後の
基地と安全保障をめぐる沖縄の現代史が話されました。基地を沖縄の子どもた
ちに伝える実践も報告されました。小学六年実践は、身近な生活の税金の使わ
れ方から基地を学び、高校生・大学生への実践は、人を殺すという「軍の本質」
から、米軍が県民の安全を保障しているかを問うものでした。お話しと実践は、
日本の課題「安保」を沖縄の民衆運動と実践から考えさせるものでした。 
(全体会の様子は、琉球新報、沖縄タイムス、琉球朝日放送等で、「歴史教育
者へ基地を問う―稲嶺市長 全国大会で報告」「歴史教育社が沖縄から安保と
民主主義考える」などと報道されました。)
2.沖縄が問うもの
 10テーマの「地域に学ぶ集い」は、唯一の地上戦・沖縄戦と戦後沖縄の苦難
の歴史、基地があるがゆえの過酷な現実、その中で、自らの生活と子どもたち
の未来を守るために、「あきらめない闘い」を続ける人々の姿を伝えました。
沖縄戦の体験者が少なくなる中で、体験を若い世代に語り継ぐ取り組みも報告
されました。分科会は、第一テーマ「歴史と現代」、第二テーマ「地域・子ど
も・授業」の二三分科会と特設分科会として日韓歴史教育交流シンポジウムが
行われた。沖縄の問題、憲法や安全保障の問題と共に、地域の掘りおこしや地
域に根ざした実践が報告され討論されました。「沖縄」が抱えている問題を、
日本の問題としていかに考えていくかを問う大会となりました。
 8日には現地見学Aコース「沖縄から安保を考える」に参加しました。現地
ガイドは元高校の先生。実体験に基づく説明には胸打たれました。「嘉手納基
地の1日の光熱費は1000万円です」「普天間小学校の移転計画があり、経費は
28億円。そのお金はないと言ったが、基地内の米軍の子どもたちの学校は38億
円で建設した」には理不尽さを感じました。5月に起きた殺害事件の犠牲にな
った女性の葬儀については、葬儀の写真を掲載さした新聞を見せながら説明し
ました。遺族の、県民の無念さが伝わりました。
 9日には南風原文化センターを訪れました。学芸員から、文化センターをど
のような思いで建設したのかを聞くことが出来ました。沖縄戦、戦後の苦難の
中でたくましく生きぬいてきた南風原の人々の歴史を、こどもたちに伝えてい
こうとする姿に感銘を受けました。
                                                                                                              (事務局長 桜井)

高校教科書検定に抗議し、新検定基準の撤回を求める決議

高校教科書検定に抗議し、新検定基準の撤回を求める決議
 
 安倍政権の下、文部科学省は2014年1月に新検定基準を追加告示し、
この新規準に基づき昨年の中学校社会科教科書に「続いて2017年度用
高等学校地理歴史・公民科教科書への初めての検定が行われた。新検
定基準の主な内容は、①「通説的な見解がない数字などの事項につい
て記述する場合には、通説的な見解がないこと」を明示すること、②
「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高
裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされてい
ること」というものだった。
 ある「日本史A」の教科書では、3・1独立運動の犠牲者数、関東大
震災時の朝鮮人虐殺者数、南京大虐殺の犠牲者数について、これまで
は歴史研究の成果に基づいて本文に具体的な数字を記述できたが、①の
検定基準に基づいて「おびただしい数」とされ、側註にはいくつかの数
字を列記し「人数は定まっていない」と記述する検定結果となった。こ
れは、たとえ数字の根拠が学問上薄弱であっても、ある主張が存在すれ
ば、「通説的な見解」はないとされ、数字を本文に記述させないという
ものである。このような恣意的な検定は、学問研究に対する不当な政治
的介入であり、そのねらいは過去の侵略と植民地支配の事実を極力薄め
ようとするものであると言わざるをえない。
 また、ある「現代社会」教科書の「積極的平和主義」に関する検定で
は、②の検定基準に基づいて、安倍政権の見解である「国際協調主義に
基づく考え方」「専守防衛や軍縮、国連PKOへの積極的参加」「国際
社会の平和と安全及び繁栄の確保に、積極的に寄与していこうとするも
の」などが書き加えさせられている。安保・自衛隊問題だけでなく、原
子力発電、日本軍「慰安婦」問題、領土問題などについても政府見解の
みを一方的に押しつける検定が行われた。これではまるで戦前の国定教
科書の再現であり、子どもの知る権利、学習権に対する重大な侵害であ
る。政治が教育を利用し、子どもたちを軍国少年・少女に仕立て上げ、
戦争に協力させた戦前の歴史を忘れてはならない。
 以上のように、今回の高校教科書の検定は、安倍政権による新検定基
準が適用され、従来にも増して憲法で保障された学問の自由、言論・表
現の自由を乱暴に侵害するものであった。そのねらいは、政府見解を一
方的に教科書に書かせることで、子どもたちの歴史認識と現代認識を画
一化し、安倍政権のめざす「戦争する国」を担う「人材」に仕立てよう
とするものであり、私たちは断じて容認することはできない。
 私たち歴史教育者協議会は、今回の高校地理歴史・公民教科書の検定
に強く抗議するとともに、新検定基準を直ちに撤回することを求めるも
のである。
 
2016年8月5日  
                                                         一般社団法人歴史教育者協議会会員集会
 

憲法改正の危機の中で、 子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう

         憲法改正の危機の中で、子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう
                     ―日本国憲法公布70年に、歴教協からの呼びかけ― 

 
     7月10日のはじめて18選挙権が実現した参議院選挙の結果は、改憲勢力が3分の2以
上の議席を得ました。しかし、憲法改正に反対する市民と4野党の共闘の力は発揮さ
れ、11の1人区で議席を得ました。沖縄・福島では、現職大臣が落選しました。
  とくに沖縄では、「オール沖縄」の候補が、沖縄・北方担当大臣に10万票以上の差
をつけ圧勝し、現職の沖縄選挙区選出の自民党議員不在となりました。新基地建設反
対で一致する「オール沖縄」の運動は、日本の新しい未来を切り開きました。これに
対し、安倍政権は、県民の民意を無視し7月11日から東村高江ヘリパッド建設を強行し、
抗議する住民を機動隊が力ずくで排除しています。また、辺野古新基地建設を巡って
沖縄県を提訴しました。これは民主主義に反し、沖縄県民に憲法が保障する生存権を
認めないものです。
    改憲勢力が3分の2を占めたとはいえ、国民は憲法改正、とくに第9条改正に支持を与
えてはいません。どの世論調査でも9条改憲に反対する世論が多数であり、共同通信社
の出口調査によれば、今回の選挙でも「安倍政権下での憲法改正に反対」が50%でした。
2012年に自民党が発表した憲法改正草案は、日本国憲法3原則(国民主権・基本的人権
の尊重・平和主義)を否定する内容です。特に9条第2項を改正し、国防軍を創設し、新
たに「緊急事態条項」を入れています。安倍政権は参院選において、憲法改正を争点に
することはありませんでした。
 初めての18歳選挙権の参院選での18・19歳の投票率は45%台であり、自民党に投票し
た率は40%でした。この間、学校現場や各地で「主権者教育」が実践され、学習会が取
り組まれました。「安保法制」反対に声を上げた高校生・大学生を中心に、「未来は自
分たちが決める」と若者独自の取り組みも行われました。
 教育現場においては、「政治的中立」の名の下に、管理が強められ、教員を「萎縮」
させる雰囲気が生まれています。自民党文部科学部会は、ホームページで「学校教育に
おける政治的中立性についての実態調査」を呼びかけました。呼びかけ文には「教育現
場の中には、『子どもたちを戦場に送るな』と主張し、中立性を逸脱した教育を行う先
生方がいる」とあり、ネット上で批判されると「安保関連法案は廃止すべきだ」と主張
するとの表現に差し替えました。これは教育への政治介入であり、密告を奨励するとし
て批判が集中したのは当然です。政権党が「実態調査」を行ったこと自体が、教育の自
由への侵害で、教員を一層、「萎縮」に追い込むものです。
 
 歴教協は、子どもたちを主権者として育てることをめざし、事実を積み上げ真実を見
抜く目を育てることに努めてきました。私たちは、憲法公布70年の今年、施行70年の20
17年を見据えて、主権者を育てる教育を広げることを呼びかけます。
 
2016年8月5日
               
                                                                                       一般社団法人歴史教育者協議会会員集会
 

6月5日(日)学習会 「歴史総合」を高校現場から考える

学習会「歴史総合」を高校現場から考える チラシ

6月5日(日) 2~5時
会  場 東京労働会館地下中会議室
資料代  300円
 昨年、中央教育審議会が「歴史総合」(仮称)の「素案」を出し、本格的な実施に向け動いています。このもとには日本学術会議の「歴史基礎」の提案があり、歴史研究者を含めた様々な論議がなされています。歴教協には、たとえば次のようなことの検討も必要ではないかという声が寄せられました。
 *『日本史A』『世界史A』はどう実践されてきたか。それとのつながりをどう考えるか。
 *実際には誰が担うことになっていくか。
  *これまで積み上げてきた「世界史」が実質的に消えていく可能性ある。それをどう考えるか。

そこで、以下の報告をお願いし、高校の現場から「歴史総合」を考える機会としたいと思います。

① “世界から”を意識した日本史A
       坂本昇さん(都立文京高校)
②  世界史必修の終焉を意味づける―世界史教育の課題と歴史新科目
       日高智彦さん(成蹊中学・高校)
③ 『歴史基礎』から『歴史総合』へ―その批判の論点
       河合美喜夫さん(都立永山高校)

 

第34回中間研究集会から学んだこと

    沖縄大会に向け、テーマ「沖縄から考える戦争と平和」に上記の集会を開催
しました。1月10日ラパスホールで参加者は講師・報告者を含め59名でし
た。
    戸邉秀明講演「沖縄戦の記憶と現代」は、沖縄研究の最新の内容、沖縄戦の
本質、特に「集団自決」に至る構造等を学ぶことができました。佐藤幸二実践
は、絵本『へいわってすてきだね』を使って、子どもたちの身の回りから平和
を考えた素晴らしい実践でした。安保法制に反対の声を上げた3人の高校生の
話は、教室・学校を超えて学ぶ姿と「人は人と出会って変わる」ことを思わせ、
未来への期待を感じました。
(参加者の声から)

常任委員会声明「憲法違反の安保法制を廃止にしよう」を出しました。

                                                 憲法違反の安保法制を廃止にしよう

     安倍自公政権は、9月19日未明、参議院本会議で安保法案を強行採決しました。中央公聴
会・地方公聴会の報告の審議もせずに、手続きを無視し、全国に広がった「違憲の戦争法案
反対」の世論を無視しての強行採決でした。安保法案反対の運動は、学生の SEALDs(自由と
民主主義のための学生緊急行動)や高校生のティーンズソウル、「だれの子どももころさせ
ない」を合言葉に全国50以上に広がった「安保関連法に反対するママの会」、賛同者が1万41
20人になった「安全保障関連法に反対する学者の会」、140の大学に結成された有志の会、レ
ッドアクションの女性行動をはじめ、宗教者、法曹界、教育界なども含め幅広い世代・分野
に広がり、これまでにない新しい動きが展開されました。若い人たちが素晴らしい役割を果
たしたことは、今後の希望です。強行採決後も、諦めることなく「憲法違反の安保法制廃止
を」「アベ政治を許さない」の声を引き続き上げています。歴史教育者協議会も、平和・民主
主義を求めて安保法案に反対する14の研究団体と連名の声明や衆議院強行採決への抗議声
明を出し、会員が各地で反対運動を展開してきました。

    安保法成立を強行した安倍政権の政治は、国民の声を無視し、日本の立憲主義、民主主義、
平和主義を踏みにじるものです。特に教育分野では、「戦争する国」づくりのために、教育の
国家統制を強化し、歴史認識を歪曲し、教育の中央集権化を強行しています。教科書検定制
度を改悪し政府見解を書かせる検定を行い、教育委員会制度の改変による首長・教育長主導
の採択制度にしました。また、「道徳の教科化」を打ち出し、特定の価値観を子どもたちに押
し付けようとしています。文部科学省は、国立大学に卒業式・入学式での日の丸掲揚と君が
代斉唱を要請し、教員養成系と人文科学系学部・大学院の廃止か、“社会的要請の高い分野”
への転換を迫る通知を出しました。今年の中学校教科書採択では、教員・保護者・市民の意
思を尊重せずに、育鵬社教科書を採択する地区が増えました。
歴史教育者協議会は宮城/東北大会で、「いまこそ、危機に抗し民主主義を前進させる取
り組みをひろげよう」と全国に呼びかけました。自由と民主主義は、子どもたちの未来が平
和であるための土台です。これからは民主主義と日本国憲法を取り戻すたたかいです。地域
や職場をはじめ多くの方々の共感を得られる取り組みを進めましょう。

                                                                    
                                                                                                                                             2015年9月27日

                                                                                          一般社団法人歴史教育者協議会常任委員会

 

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