授業に生かせる 歴史教育者協議会 編 まえがき 授業中や授業後に子どもたちからなにげなく発せられる質問というのは、じつに鋭いものです。教師の勉強不足や説明の不十分さをついているものもありますが、なかにはベテラン教師もタジタジ、専門研究者でも簡単には答えられないものも少なくありません。それは、授業領域のこぼればなし程度をはるかにこえて、学問の真実にせまり、研究の空白を指摘することにもなります。 歴史教育者協議会の月刊機関誌『歴史地理教育』では、1994年4月から2002年3月までの8年間にわたり、そうした子どもの質問に答える「先生教えて」の欄をもうけて、毎号掲載してきました。最初の質問は前方後円墳に関するものでした。やりとりをとおして、子どもたちは前方後円墳を「鍵穴みたい」、「どちらが前なのか」、「どうして前が四角なのか」と立ち止まって考えていることがわかり、授業ではそこにまで踏み込まなければ、子どもの授業への興味ををかきたてることができないのだということを教えられました。 「先生教えて」の連載は好評でした。教師たちからばかりか、教師以外の読者から「何十年来の疑問がとけた」と感想がよせられることもありました。本書はその連載をペースに取捨選択と新しい質問も加え、さらに図版・資料を入れ、教科別にまとめたものです。 系統的にまとめたものではないのですが、子どもたちの素朴な疑問をそのままにすることなく、調べてわかるおもしろさにしたり、一見小さなことのように見えることへのこだわりが、重要な歴史や社会の真実にせまることがあるということを実感していただければ幸いです。 なお、使いやすさを考慮し「歴史篇」と「地理・公民篇」に分け、2分冊にいたしました。資料も「おや?」と思ったときになかなか手に入らないものを掲載いたしました。 教師のみなさんと子どもたちとで、ともに考えながら、たのしく使用してほしいと願っております。 2002年6月 『授業に生かせる子どもの疑問。質問』編集委員会 |