<歴史教育者協議会の設立趣意書>
私たちはかぎりなく祖国を愛する。そうして私たちは、日本からいっさいの封建的なものや、ファッショ的なものを排除し、一日も早く、内には民主主義を発展させ、外には国際平和に寄与するようになることをねがうものである。私たち歴史教育に関心をもつものは、過去においてあやまった歴史教育が軍国主義やファッシズムの最大の支柱の一とされていた事実を痛切に反省し、正しい歴史教育を確立し発展させることが私たちの緊急の重大使命であることを深く自覚する。
私たちの確信によれば、
1、歴史教育は、げんみつに歴史学に立脚し、正しい教育理論にのみ依拠すべきものであって、学問的教育的真理以外の何ものからも独立していなければならない。
2、歴史教育は、すべての国民が社会や国家の主人としてそれを発展させてゆくべき権利と責任とをもっているところにおいてのみ、かつ、その歴史創造の実践に役立つものとしてのみ発展することができたという歴史的事実と理論にかんがみ、民主主義的実践的立場と目的こそが正しい歴史教育の根本の立場と目標である。
3、歴史教育は国家主義と相容れないと同時に、祖国のない世界主義とも相容れないのであって、 国家の自主独立が真の国際主義の前提であるという歴史的事実と理論にかんがみ、正しい歴史教育は正当な国民的自信と国際的精神を鼓舞するものでなくてはならない。
このような歴史教育をうちたてるには、歴史学者が歴史教育者と提携することはもとより、すべての歴史および教育に関心をもつものが協力しなければならないであろう。
その提携協力の機関として、ここに私たちは歴史教育者協議会を設立する。民主的な祖国の再建を志し、歴史教育に関心をもつすべての人が、こぞってこの会に参加し、正しい歴史教育の研究に、実践に、普及に、発展に協力されんことを切望してやまない。
(1949年7月14日創立) |