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歴史地理教育1月号(No874)-特集・東アジアの未来

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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特集 東アジアの未来

沖縄の自己決定権と東アジア 新垣毅
東アジアの未来をつくる香港の若者たち 倉田明子
東アジアの未来を見つめる─歴教協の日韓中歴史教育交流 齋藤一晴
 〈第一六回日韓歴史教育交流シンポジウムin済州〉
   ① 韓国の中高生は、沖縄戦・基地問題をどのように考えたか─公開授業を参観して 若杉温
   ② 高校生が自分のこととして歴史を学ぶ─授業実践報告を聞いて 桜井千恵美
日韓の交流と友好を深める韓国修学旅行 深沢美恵子 

小学校の授業 朝鮮学校初級部(特別授業) 一・二年生と絵本『ソリちゃんのチュソク』を読む─韓国の絵本を使った授業の可能性を考える 木村誠
中学校の授業 公民 北方領土は誰の土地か 古川和義
高校の授業 世界史 アメリカの黒人奴隷制を考える─「支配と従属」を考える授業実践 長澤淑夫 

連載 子どもの目  ▼津波てんでんこ 大見功
窓  ▼東アジアの視点で考える日清戦争・日露戦争 大日方純夫
[新連載]歴史修正主義と「明治一五〇年史観」① ▼歴史修正主義と「明治一五〇年史観」克服のために 山田朗
地域─日本から世界から257 ▼基地の街朝霞から見える日本と世界 中條克俊
君たちに逢えてよかった⑤ ▼スーパールーズソックスと田中正造─「一生に一度の修学旅行」考 佐藤幸二
絵本で知ろう! アフリカの国⑩ ▼「もどってきたガバタばん」 尾崎俶美
世界を歩く102 ▼一味違う韓国案内(13)「光州」 朴星奇〔訳:三橋広夫〕
各地からの便り? ▼沖縄県・琉大社会科研究会 学生から見た「くさてぃ」 神村叶人
歴教協第70回京都大会/「伝統」と「革新」の息づく京都へ① ▼きょうと、あしたと、みらいと─七〇回大会で新しい飛躍をめざす 羽田純一
探訪ミュージアム102 ▼済州抗日記念館(韓国・済州島) 平野昇 
読書室『触発する歴史学─鹿野思想史と向きあう』
      『歴史を社会に活かす─楽しむ・学ぶ・伝える・観る』
      『歴史を学び、今を考える─戦争そして戦後』
      『戦争の日本古代史─好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』
      『《伊東マンショの肖像》の謎に迫る─一五八五年のヴェネツィア』
      『フクシマ6年後 消されゆく被害─歪められたチェルノブイリ・データ』 
授業実践/高校倫理 内面の危機を社会的、歴史的に綴る生徒たち─生徒の内面に「現代日本」の歪みを見る 田中恒雄
授業実践/高校日本史 樺太アイヌの「移住」─樺太・千島交換条約に見る近代国民国家とアイヌ 國岡健
二〇一七年七月増刊号「社会科七〇年 これまでとこれから」合評会報告(上) 実践記録「加害者が被害者になる戦争」から学ぶ 山田規雄 

●写真●伝言板●北から南から─歴教協各県支部ニュース507●今月の動き●読者のひろば●次号予告

 

(決議)道徳の教科化に強く反対し、日本国憲法の精神に立脚した教育を実現しよう

  学習指導要領の「改正」に伴い新しく設置された「特別の教科である道徳」(以下「道徳科」)が、来年度より本格実施より2年早く順次開始されていくことになりました。道徳が教科化されることになったのは、2011年10月の滋賀県大津市で起こったいじめ事件がきっかけとされています。が、実はそれ以前から道徳教育を「充実」させる動きは存在していました。例えば「道徳教育推進教師」を設けたり、『心のノート』や『わたしたちの道徳』を文部科学省が編纂したりしたことはその一例です。にもかかわらず、教科化に踏み切ったのは学校現場に文部科学省などが意図している道徳教育が浸透しなかったためなのです。また、2006年に教育基本法が「改正」されました。今回の道徳の教科化の成立には、この教育基本法が大きな推進エネルギーを与えました。また教育再生実行会議の役割も大きかったといえましょう。両者とも戦争のできる国づくりに邁進する安倍政権下において行われたことに、私たちは目を向ける必要があります。
    では、「道徳科」は今までの「特設道徳」とどこがどう違い、何を狙っているのでしょうか。
    第一に、教科化されるということは、教科書が使われることになります。教科書は学習指導要領に則って作成されます。その学習指導要領に列挙されている20余りの項目(道徳的価値観)が、学習のねらいとなり、教科書を用いて学習することになるのです。新しく作られた教科書が公表されたとき、各メディアは「パン屋」が出てくる箇所に「『学習指導要領に示す内容(伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度を学ぶ)に照らし扱いが不適切』と検定意見がついた」と一斉に報じました。「道徳科」が一定の価値観をすりこもうとしていることが、明らかになったよい例です。このように「道徳科」は、愛国心教育を国家が強要し、自分で判断する能力の芽を摘んでしまう道徳的価値観を学習する教科なのです。
    第二に、評価が行われます。評価の仕方は数値化することは避け、文章による記述に留めると説明されています。しかし、その記述の仕方は、学習活動の様子を書くのではなく、子どもの変容に力点を置いて行うように説明されています。教科になるということは、評価規準が作成され、それに照らし合わせて評価がなされます。その評価規準が、すでに特定の道徳的価値観を含んだものになっていることに目を向ける必要があります。つまり、特定の道徳的価値観に照らし合わされた評価が行われるということになるのです。
    第三に、「筆頭教科」としての位置づけがなされます。2017年6月に公表された『小学校学習指導要領解説総則編』には「道徳教育推進上の配慮事項」という節が設けられて、全体計画の作成から各教科・外国語活動・総合的な学習の時間・特別活動の教育活動にいたるまで道徳教育との細かな関連が懇切丁寧に記述されています。「道徳科」実現に関わった委員の一人は、改正教育基本法の教育の目的の一号に書かれていることは「知、徳、体は並列ではなく(中略)人間として求められる道徳的価値意識を培う徳の教育が基盤となって、知育、体育がある」と述べています。教育活動全体が、「道徳科」を中心とした道徳教育の理念を上位において展開されようとしているのです。
    教育勅語の内容を再評価し教材化することに何ら問題も無いとする政治家の発言も合わせて考えると、「道徳科」を中心とした新学習指導要領下の道徳教育は、戦前の修身が果たしてきた役割を担う存在であるといえましょう。私たちは、これから展開される道徳の教科化に伴って行われる道徳教育に強く反対するとともに、日本国憲法の精神に立脚した主権者を育てる教育の実現を決意します。

2017年8月4日           一般社団法人歴史教育者協議会 会員集会

(決議)9条改憲を許さず、憲法の平和主義を守り育てる教育実践に取り組もう

    安倍首相は施行70年の憲法記念日の5月3日、「日本会議」系改憲団体の集会に改憲を主張するビデオメッセージを送るとともに、『読売新聞』紙上で「首相インタビュー」に応えるかたちで9条改憲について具体的な見解を明らかにしました。その主な内容は、憲法9条1項、2項を残したまま、新たに自衛隊の存在を明記する第3項を追加するというもので、この改憲を東京オリンピック・パラリンピック開催を期して2020年に施行したいと時期までも言及するものでした。7月2日に実施された東京都議選では自民党は歴史的な惨敗という結果になりました。これは安倍首相による9条改憲に反対する世論を示すとも言えますが、首相は改憲案を今秋召集される臨時国会には提案するという都議選前の姿勢を崩そうとはしていません。9条改憲をめぐって、かつてなく重大な局面を迎えています。
    憲法尊重擁護の義務を負う行政府の長たる首相が公然と改憲を主張すること自体重大な憲法違反であることは勿論、オリンピックを政治的に利用するという点でも五輪憲章に反する行為で許されません。しかも、日本国憲法の原理の一つである平和主義を破壊しようとするものであり、歴史教育・社会科教育の中で平和の価値を何よりも大切にし、日本国憲法の平和主義をさまざまな形で実践し、子どもたちとともに学んできた歴史教育者協議会として見過ごすことのできない事態だと考えます。
    国民の中に自衛隊を肯定的に評価する傾向が強まっていることは事実でしょう。これは2011年の東日本大震災などでの自衛隊の災害救助活動を多くの国民が見聞した結果だと考えられます。しかし、今問われているのは、国民が認めるとされる災害救助の自衛隊を憲法に位置付けるか否かではありません。2014年、安倍政権はこれまで政府自身憲法9条の下で認められないとしてきた集団的自衛権の行使を閣議決定によって容認しました。翌2015年、日本が攻撃を受けなくても、地球上のどこででもアメリカが戦争を始めれば、自衛隊はその「後方支援」をおこなうとした安保法制の成立を強行しました。こうして海外でアメリカとともに戦争をおこなうことを安保法制で認めさせた自衛隊を、次は憲法の中に位置付けようとしています。自衛隊が戦力不保持、国の交戦権否認を定めた9条2項と両立しないことは明らかです。世界有数の軍事力を保有し、地球上どこででも活動する自衛隊が憲法に位置付けられれば、9条2項は空文化されることは明らかです。それは、とりもなおさず自衛隊が9条の制約を取り払われ、事実上軍隊として海外で活動することにほかなりません。
    日本国憲法は、国際紛争を解決する手段として戦争を放棄し、一切の戦力を保持せず、国の交戦権も認めない、日本の安全と生存は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持するのだと人類の理想を高く掲げています。私たち歴史教育者協議会は、これまでも保守勢力による改憲策動に対してたたかってきました。9条改憲を許さず、日本国憲法の平和主義を守り育てる教育実践に取り組み、改憲を許さない運動を全国で展開することをここに決議します。

2017年8月4日 一般社団法人 歴史教育者協議会会員集会

全国から869名の参加。第69回神奈川/関東大会、成功裡に終了

  以下の報告は、大会の一端を記述しただけなので、詳しくは、大会増刊号を参照してください。

●今大会は、川崎市にある法政大学第二中高等学校の木月ホール(1300名収容の大ホール)と各校舎で行われました。

●毎年行われる大会での全体会は、「現地実践報告」が1つの売りになっています
  今年は、『君たちには話そうー甦る登戸研究所~足元を掘れ、そこに泉わく~』と題して報告されました。
  神奈川県川崎市の明治大学生田キャンパスにあった旧陸軍「登戸研究所」を、当時の法政大学第二高等学校の生徒たちが、歴史教育者協議会の会員であった社会科教師の指導によって掘り起し、その後は、市民たちがその保存運動に取り組み、今は、「明治大学平和教育登戸研究所資料館」という立派な施設になっています。その全経過を、取り組んだ本人をも交えての朗読劇で表現した報告でした。
  「高校生の実践報告が印象に残りました。地域の身近なところから疑問をもち、地域の方とつながりながら学びを深められていることがとてもすばらしいと思いました。」(京都府30代女性)を始め、多くの感想が寄せられました。
  また毎年、様々な方をお呼びしての講演も楽しみの1つです。今大会の講演は、テレビで活躍されている金平茂紀さんから「あるテレビ記者が見た日本の今・媒体・教育」と題してのお話しでした。この講演にも多くのコメントが寄せられましたが、その中から1つ紹介します。「経験豊富な金平さんの話は、一瞬もゆるむことなく話が続き、楽しくも緊張感をもって聞くことができた。今という時代と状況を切り取る姿勢がすばらしいと感じた。授業も同じではないかと昔の記憶と重なった。素晴らしいプレゼントだった。」(千葉県60代)

●各分科会での、充実した実践が報告
  各分科会は、8月5日、6日の2日間を掛けて、木月ホールから隣接している法政大学
第二中高等学校舎で行われ、多くの充実した報告が行われました。
  今大会では、学生スタッフの方々の分科会参加を位置づけ、その学びも重視して取り組まれました。参加した若手・学生スタッフの方々の感想をいくつか紹介します。
・第4(世界)、第5(憲法と現代の社会)に参加しました。
 憲法制定70年というところで、今一度憲法が受け入れられた喜びに触れ、それを理解した上で改憲論議を展開する必要を感じました。
・高校分科会
 様々な授業実践を学びましたが、実践以前に社会科とは何かを考える良い機会になりました。「社会科を自分のモノにできないと意味がない」とある先生の発言を聞いて、私は社会科とは人間一人一人が自分らしく、よりよい人生を送るための教科だと思いました。社会科だけに限った話ではないですが、生徒にとって人生のツールとなるような発見と出会わせることが教員にとって大切なことだと感じました。
・前近代分科会
 私自身、前近代(日本中世史)を勉強しており、直接の動機もそこにあったわけですが、正直なところ、ここまでたくさんの多様で深い学びの授業実践があるとは予想のはるか上でした。地域資料の活用、文献資料やモノ資料を通した生徒への問いかけ、歴史的事実を我がこととして捉えられるような仕掛けづくり、などなど、どのご報告からも、教育現場での、試行錯誤の一端を教えていただきました。
・高校分科会B
 深い学びのためには、形としてデスカッションや、グループワークをやることが大事なのではなく、その活動に見合った少し難しい課題をこちらで設定することが最も重要なのだと、改めて実感しました。

●地域に学ぶ集いは、407名が参加
 この「地域に学ぶ集い」も、その時々の大会開催地にまつわる様々な歴史的内容や現在の問題点などが学べるものとして開催されてきました。今大会では、8月5日(土)分科会終了後に、地域に学ぶ集いが本部企画3講座を含め13講座が行われ、「学べて良かった」等々の感想が寄せられました。その1部を紹介します。
・小田原城と城下町
「私は小田原城に行ったことがなく、今回の講座は興味深く聞くことができた。特に遺跡から様々なことが分かるのは面白いと思った。機会があれば小田原城に行ってみたい。」(東京都・男性・20代)
・19世紀半ばの横浜
「日本の裏の歴史だと思います。大変有意義な講義でした。ありがとうございました。世話人の方々、お疲れ様でした。」(神奈川県・女性・20代)
「なかなか教科書には載らない歴史ですが、近世から近代にかけての社会システムを考える上で、無視できない大切な視点を提示していると思った。」(埼玉県・男性・50代)
・横浜中華街の歴史と華僑の歩み
「ずっと疑問だった山手中華学園と中華学院との違いが分かってよかったです。もっともっとお話聞きたかったです。ありがとうございました。」(神奈川県・女性・10代)
「興味深く拝聴できました。横浜中華街が、華僑と日本人が作ってきたという話が、印象深かったです。初めて中華街についての話を聞くことができました。時おり訪れる中華街が、より身近に思いました。」(東京都・男性・50代)
・安保と米軍基地問題―横須賀・厚木・米軍機墜落
「横須賀の街について、また自衛隊や米軍について、ニュースではなかなか流れない情報を知ることができ、学ぶことが多かった。平和運動を続ける鈴木さんの姿にも感銘を受けました。」(京都府・女性・30代)
・貧困と格差への取り組み
「自分が病気をして休職した時に、このままずっと復職できなかったらどうなるんだろうとずっと不安だった。普通の人が病気や親の介護、リストラなどで離職するとあっというまに坂から転げ落ちるように困窮する。だから自分も薬を大量に飲みながらやっと復職した。歴教協にいらっしゃる先生方のようないい授業をする体力もない。だけどこの困窮者の気持ちはよくわかる。こんな教師でいいのかと思うが、生活するため、お金の為にはどんなに苦しくても働かなければならない。定年を65歳にするとか、年金を70歳にするとか絶対反対である。こんな日本は間違っていると思う。」(埼玉県・女性・50代)
・子どもたちの今―川崎中1死亡事件を考える
「私は現役を離れ、地域で活動していますので、地域の子どもたちとどう向き合うべきか参考になりました。私は教員としては無力で、生徒の困難を知りつつ、できたことは彼らの話を聞いてあげることだけでした。親も大変な状況にあり、10代の子がこんな重荷を背負わなければならないのか、と呆然とするばかりでした。地域の中で子どもにどう寄りそっていけばいいのかと悩んでいます。」(神奈川県・女性)
・ヘイトスピーチ 出合い直しませんか?
「正義とは一体何なのかと考えさせられました。警察は市民を守るものなのでは…。ヘイトスピーチをするのも確かに市民ですが、これは人権侵害であり、言論の自由は通らないと思います。このような状況なのに、仲間がいることが素晴らしいと思いました。やはり、学校や地域で根強い人権教育がなされているのだと感じました。「規制でできないのは根絶ではない」「先生がおくすることなくヘイトスピーチ反対を訴える」という言葉が心に残りました。その通りだと思います。共に闘いたいと思いました。」(京都府・女性・30代)
・授業が面白くなる地域資料の使い方
「地域史の教材研究に力を入れたいと思いました。葛飾・荒川区あたりで勤務しておりますので、幅広い視点で教材を見つけるために、街を歩いてみます。本日はありがとうございました。」(埼玉県・男性・20代)
「社会科を学ぶ上で、地域資料の重要性について学ぶことができた。また、歴史を教える上で教員自身が資料室や博物館を利用して、授業を構成することも大切だと思った。」(神奈川県・男性・20代)
・関東大震災下の中国人虐殺
「知って勉強しなくてはいけない歴史があることに気づかせてくれる“集い”でした。人間が一歩まちがうと集団で何するかわからないことを知性と理性でのりこえていかないと…と思います。」(福岡県・男性・50代)
「何故朝鮮人とともに中国人がたくさん殺されたのか、少しだけわかったような気がします。これから自分でも調べてみたいと思います。」(千葉県・男性・60代)
・東京湾臨海部の開発を考えるーオリンピック施設や豊洲市場問題の背景
「まだまだ勉強不足であったが、そのような私でも、難なく聴けるお話だった。東京都のことだからと言って、無関心な自分で終わらず、これからも学び続け、ニュースを追い情報を仕入れ、自分自身の意見を持ち続けたいと思う。」(福岡県・男性・20代)
「臨海部は社会科見学でよく使うが、その目的や歴史は理解していなかった。不透明な部分が多く、メスを入れなければならないところに入れない現状が腹立たしい。その中で納得いかぬままオリパラ教育をやらなければならないことに不満を感じる。」(東京都・男性・50代)
・教科書問題―育鵬社版教科書と「道徳」教科書を考える
「これだけ明らかに問題のある記述がされている育鵬社の教科書。だれが見ても課題は明確なのに、全国的な報道として取り上げられていないことが恐ろしいと思った。本当に子どもたちのことを思えば、明らかな偏りのある教科書は選ばないのではと感じた。今回、歴教協の全国大会に来たからこそ、学ぶことができたが、一般の教員はほとんどこのような現状を知らないのではないかと考えると、私たち現場の教員がしっかりと学習し、正しい知識をつけていかなければと思う。」(福岡県・男性・20代)
・日中授業交流―授業に生きる力をみなぎらせる金陵中学における歴史研究の概況
「中国の歴史教育が体系的に理解できた。」(東京都・男性・30代)
「中国の歴史教育の概況を知る機会を得て、とても嬉しかったです。惜しむらくは若い人が殆どいない?ですね。(女子学生がひとりいらっしゃったのは本当によかったです)歴教協の若い先生にもきいてほしかったと思います。それを啓発するのは我々のやくわりかな。非常感謝老師的訪問日本、参加歴史教育者協議会第69届全国大会(神奈川大会)。清老師的明年也来日本参加第70届全国大会(京都大会)老師的一路平安~!」(京都府・女性・30代)

●閉会集会でも「現地中・高・大」の実践報告と京都へのバトンタッチ
  今回の閉会集会は、神奈川実行委員会の希望もあり、中学校・高校・大学での地域の掘
り起し実践報告に、最後まで学ぶことができました。
  恒例の引き継ぎでは、神奈川大会実行委員会から京都大会実行委員会への「鳩サブレと大会資料」などが手渡されました。
 このホームページ「大会報告」をご覧になった方々が、ぜひ来年の京都大会にお出で頂くことを祈念しています。

神奈川/関東大会は869名の参加で熱気溢れる大会となりました

「地域に生きる希望を 子どもたちに」をテーマに8月4日から6日まで、法政大学第二中・高等学校で開催した、第69回全国大会は869名の参加者が集い、熱気溢れる大会となりました。
   大会を準備して頂いた現地実行委員会及び会場校の法政大学二中高の方々に感謝申し上げます。
 大会の印象の中から、若い世代への継承と国際交流の面での印象を述べます。
一つは、開会集会の現地報告と閉会集会での高校生・学生の発表でした。現地報告は法政二中高の生徒が登戸研究所の「闇」を追究していく過程で、元研究所員が重い口を開き、市民の運動も広まり、登戸研究所の保存に結実した報告でした。閉会集会の生徒の発表も、地域の戦争の歴史を学ぶ中で得た、歴史を知る大切さと平和の尊さを、自分なりの言葉で表現していました。「地域に生きる希望を」感じさせてくれました。
 学生・若手スタッフの存在は、歴教協の今後の大会及び活動のあり方を考える上で、示唆を与えられました。韓国と中国の代表挨拶があり、東アジアの歴史教育者の交流が実現したことです。
    地域に学ぶつどいで、各分科会で、現地見学で、様々な交流と学びが出来た大会だったと思います。
   現地実行委員会をはじめ、大会運営に携わって頂いた方々、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。
                         事務局長 桜井千恵美(8月10日)

大研究!日本の歴史 全5巻

本書の題名
   大研究!日本の歴史 全5巻
      第1巻 弥生時代~鎌倉時代
      第2巻 鎌倉時代~江戸時代
      第3巻 江戸時代
      第4巻 明治時代~大正時代
      第5巻 明治・大正~昭和

出版社
   岩崎書店
 
価格
  揃定価(揃本体 16,500円+税)

「共謀罪」創設に反対する声明

 政府は、東京オリンピック・パラリンピックを口実に、「テロ等準備罪」(以下「共謀罪」)を今国会で創設しようとしています。「共謀罪」は、「行為」があって初めて犯罪が成立するという近代刑法の大原則を踏みにじって、「犯罪を行うことを相談、計画した」だけで処罰するところに本質があります。思想及び良心の自由を保障した日本国憲法19条に反する違憲立法です。「共謀罪」は、処罰の必要より国民の自由を侵す危険が高いとして、過去3回国会で廃案になってきました。
  「共謀罪」は、「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」をおこなうことを目的とした組織が、団体の活動としてそれらの共謀した者を処罰するものです。政府は「従来の共謀罪とは違う」とし、暴力団や詐欺集団のような「組織的犯罪」の犯行を処罰するもので一般市民は対象外だとしています。しかし、どういう組織かは警察の判断にゆだねられるのです。「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」は、現行法で600以上あります。また、金田勝年法相が、「共謀罪」国会審議に関し、「国会提出後、議論を重ねていくべきだ」とする文書を作成・配布したことは、憲法の大原則・三権分立を否定する行為です。
    政府は「共謀罪」導入を、「テロを防ぐ『国連越境組織犯罪防止条約』を締結するため」としていますが、この条約は、同時多発テロ以前の2000年に採択されたものであり、マフィアや暴力団による経済犯罪への対処が目的であり、テロ対策ではありません。日本はすでにテロ防止のため13本の国際条約を締結し、それに基づく国内法を整備しています。「テロ対策」の名で、国民の思想や内心までも取り締まる「共謀罪」は、物言えぬ監視社会をつくり、安倍政権が進める「戦争する国」づくりのための現代版「治安維持法」と呼ぶべきもので、国民を欺くものです。
    1925年制定された治安維持法は、当初示された目的が拡大解釈され、共産主義者、社会主義者のみでなく、自由主義者をも弾圧されました。教育分野においても、教育労働者の解放をめざした新興教育運動関係者を捕らえた長野県「二・四事件」(1933年)や、子どもの生活に密着し、ものの見方・考え方・生き方を育てることを目的とした東北や北海道などでの生活綴方・生活図画教育運動への弾圧事件(1940~41年)をはじめ、全国各地で、治安維持法違反容疑で多くの教職員が検挙されました。このような中、長野県では、子どもたちを満蒙開拓青少年義勇軍に積極的に送り出す戦争協力体制を推進する教育が行われたのでした。
    私たち歴史教育者協議会(歴教協)は、戦前・戦中の反省に立ち、憲法を土台に、平和・民主主義・人権の教育と歴史の真実に基づく歴史教育・社会科教育を追究してきました。そして安倍政権が進める「戦争する国」の国民の育成に反対し、学問・教育の自由の大切さを主張してきました。「共謀罪」が、治安維持法のように学問の自由な活動を脅かすのみならず、労働組合や市民団体の活動を弾圧するための道具として使われるのではないかと危惧します。
    私たちは歴教協設立趣意書にあるように、「歴史教育は、げんみつに歴史学に立脚し、正しい教育理論にのみ依拠すべき」という立場から、教育が再び権力の介入により歪められてはならないと考え、「共謀罪」創設に反対します。

2017年2月20日 一般社団法人 歴史教育者協議会常任委員会

第68回沖縄大会、全国から615名の参加で、成功裡に終わる

以下の報告は、大会の一旦を記述しただけなので、詳しくは、大会増刊号を参照してください。

●歴史教育者協議会第68回沖縄大会は、2016年8月5日から7日まで、名護市民会館と琉球大学キャンパスで行われました。
 大会直前の7月22日には、東村高江のヘリパット建設現場に、本土からの機動隊も投入されての工事強行に見られるような「沖縄から安保と民主主義を問う」という大会テーマに関わる重大な状況のなかでの大会となりました。
● 全体会に、550名の参加。地域特別報告・シンポジュウムから多くのことを学ぶ。
全体会は、名護市民館で行われました。
 まず、『「沖縄」を日本全体の課題とするために』と題した、丸浜昭歴史教育者協議会副委員長からの「基調提案」があり、高江からの緊急現地報告の後に、地域特別報告として、名護市長の稲峰進さんから「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」と題して、沖縄情勢についてのお話がありました。
 全体会の司会をされた現地実行委員の上野さん自身も司会終了とともに高江に向かうとの発言に、緊張が走った一瞬でした。
 その後のシンポジュウムは「日米安保体制に抗う沖縄民衆のたたかいに学ぶ」と題して行われました。まず、元衆議院議員の古堅実吉さんからは、復帰前の人権抑圧と分断に対する民衆の闘いの実態や人民党議員として取り組んだ軌跡についてはなされ、さらに、沖縄大学名誉教授の新崎盛輝さんからは「構造的沖縄差別」との闘いを中心に報告がありました。
その上で沖縄県歴史教育者協議会のお二人の方の実践報告、下地治人さんからは「石嶺・沖縄から日本の政治を考える」との小学校6年生の実践、北上田源さんからは「在沖縄海兵隊の実態から軍隊の本質を考える」という大学での実践の報告がありました。
その後の討論も大変充実していて、時間が少ないのが残念でした。
● いくつかの分科会の感想から 
8月6日、7日の2日間を掛けて、琉球大学キャンパスの教育学部・法文学部棟で行われました。
第1分科会から第24分科会(第8分科会は行われず)の23の分科会と2つの特別分科会が行われ、活発な討論が展開されました。以下、いくつかの分科会参加者の感想を記述します。
・第11・12分科会(小学校3・4年生) 
 4年生の子どもたちが沖縄の学童疎開を、このように深く自分に引き寄せて考えていることに感動しました。今まで見えなかったものが見えるようになったという儀間先生のまとめにあるように、学んだ子どもたちに拍手です。
 また、琉球かすりという学習は、平和を象徴するもので、未来を織り成す子どもたちの希望が見えます。
・第14分科会(小学校6年生)
 教科書に書かれている歴史と自分が住んでいる地域の歴史は、同じなのか、違うのか、もし違うならそれはどうしてなのか、(報告者の)先生の「沖縄の自由民権運動」の実践から当時の沖縄の人々が置かれた状況がとてもリアルに感じられた。自由民権運動を地方史から捉え直すと差別の構図や人々の心が見えてくると思った。
・第21分科会(障がい児教育)
 今回の分科会で障がい児に対する教育の実践例を取り上げていて、障がい児に対する教育は普通学級でも生かせる内容もたくさんあり、学生としてこれからも実習や現場に出たときの参考になりました。
・第23分科会(社会科の学力と教育課題)
 授業実践を通して(具体的な事例)、授業の内容と方法について考えさせられた。
 子どもの思考に寄り添いながら、議論を展開できる教師を目指したい。
 今回のように、様々な実践に出会い、多くの人の意見や見方を知ることから、まず始めたい。
●地域に学ぶ集い
 沖縄大会の大会テーマ「沖縄から安保と民主主義を問う」にふさわしい内容の10の講座と2つの本部企画を合わせて12の集いが開かれ、約390名の方が参加で、どの講座も充実した内容でした。講座の感想をいくつか記述します。
・「高江ヘリパット建設阻止のたたかい」
 9年間のたたかいの一端に触れさせていただき、民意が反映されないもどかしさを痛感しました。8月5日の朝、N1裏テントの様子を見させていただき、機動隊が並んでいる光景の異様さに驚きました。
 日々の当たり前の暮らしが強引に壊されている怖ろしさを痛感しました。私自身の無知にも憤りを感じ、伝える大切さを感じました。
・「沖縄から見る日米の軍事一体化の実態」
 今まで米軍基地と自衛隊基地を区別して考えていました。しかし、今回のお話を聞いて、米軍と自衛隊が密接に結びついていることに気がつきました。安保法が通り集団的自衛権が行使されるようになると、自衛隊の武器だけでなく隊員もアメリカと共同してますます戦争に関わることになることが問題だと感じました。全てのアメリカの戦争に日本も関係していってしまうように思います。
・「若者たちと考える沖縄の平和運動」
 同年代の皆さんの口から語られる言葉に好感が持てました。信念や行動する勇気だけでなく、迷いや葛藤についても語ってもらえたことに共感できました。
 社会の問題を常に自分のこととしてとらえることは無理です。しかし、教師として、平和がおびやかされること、人権がおびやかされることについては問題意識を持てる子、問題提起する力がある子を育てていきたいと、みなさんの話を聞いて、改めて考えることができました。
・「国策に翻弄される地域の生活と教育」
 辺野古の人たちは語らなくなったと聞いていましたが、その実情や理由がよく分かりました。子どもたちにまで大きな影響を与えていることを考えると本当に恐ろしい。20年経過してもまだ先が見えない。どうして沖縄がこういう目にあわないといけないのか。国家は国民のためにあるはずなのに、国民不在の国の在り方には本当に腹が立ちます。学ぶ大切さも同感です。
● 閉会集会で、神奈川へのバトンタッチ
閉会集会では、神奈川県の若手の方(父親が沖縄出身で、神奈川で教員をしている)の
神奈川大会への抱負の発言と沖縄の若手からはこの大会で学んだことの発言がありました。
 さらに「18歳選挙権実施と歴教協の課題」「育鵬社教科書を用いてた実践報告」などの情勢を反映した発言がありました。
 恒例の引き継ぎでは、沖縄から泡盛とともに神奈川へのエールが贈られ、神奈川からは、今大会の「沖縄から安保と民主主義を問う」というテーマを引き継ぎながら、神奈川のテーマ「地域に生きる希望を子どもたちに」に生かすことで、神奈川大会の成功を目指したい、との決意が語られました。