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神奈川/関東大会は869名の参加で熱気溢れる大会となりました

「地域に生きる希望を 子どもたちに」をテーマに8月4日から6日まで、法政大学第二中・高等学校で開催した、第69回全国大会は869名の参加者が集い、熱気溢れる大会となりました。
   大会を準備して頂いた現地実行委員会及び会場校の法政大学二中高の方々に感謝申し上げます。
 大会の印象の中から、若い世代への継承と国際交流の面での印象を述べます。
一つは、開会集会の現地報告と閉会集会での高校生・学生の発表でした。現地報告は法政二中高の生徒が登戸研究所の「闇」を追究していく過程で、元研究所員が重い口を開き、市民の運動も広まり、登戸研究所の保存に結実した報告でした。閉会集会の生徒の発表も、地域の戦争の歴史を学ぶ中で得た、歴史を知る大切さと平和の尊さを、自分なりの言葉で表現していました。「地域に生きる希望を」感じさせてくれました。
 学生・若手スタッフの存在は、歴教協の今後の大会及び活動のあり方を考える上で、示唆を与えられました。韓国と中国の代表挨拶があり、東アジアの歴史教育者の交流が実現したことです。
    地域に学ぶつどいで、各分科会で、現地見学で、様々な交流と学びが出来た大会だったと思います。
   現地実行委員会をはじめ、大会運営に携わって頂いた方々、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。
                         事務局長 桜井千恵美(8月10日)

大研究!日本の歴史 全5巻

本書の題名
   大研究!日本の歴史 全5巻
      第1巻 弥生時代~鎌倉時代
      第2巻 鎌倉時代~江戸時代
      第3巻 江戸時代
      第4巻 明治時代~大正時代
      第5巻 明治・大正~昭和

出版社
   岩崎書店
 
価格
  揃定価(揃本体 16,500円+税)

「共謀罪」創設に反対する声明

 政府は、東京オリンピック・パラリンピックを口実に、「テロ等準備罪」(以下「共謀罪」)を今国会で創設しようとしています。「共謀罪」は、「行為」があって初めて犯罪が成立するという近代刑法の大原則を踏みにじって、「犯罪を行うことを相談、計画した」だけで処罰するところに本質があります。思想及び良心の自由を保障した日本国憲法19条に反する違憲立法です。「共謀罪」は、処罰の必要より国民の自由を侵す危険が高いとして、過去3回国会で廃案になってきました。
  「共謀罪」は、「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」をおこなうことを目的とした組織が、団体の活動としてそれらの共謀した者を処罰するものです。政府は「従来の共謀罪とは違う」とし、暴力団や詐欺集団のような「組織的犯罪」の犯行を処罰するもので一般市民は対象外だとしています。しかし、どういう組織かは警察の判断にゆだねられるのです。「4年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」は、現行法で600以上あります。また、金田勝年法相が、「共謀罪」国会審議に関し、「国会提出後、議論を重ねていくべきだ」とする文書を作成・配布したことは、憲法の大原則・三権分立を否定する行為です。
    政府は「共謀罪」導入を、「テロを防ぐ『国連越境組織犯罪防止条約』を締結するため」としていますが、この条約は、同時多発テロ以前の2000年に採択されたものであり、マフィアや暴力団による経済犯罪への対処が目的であり、テロ対策ではありません。日本はすでにテロ防止のため13本の国際条約を締結し、それに基づく国内法を整備しています。「テロ対策」の名で、国民の思想や内心までも取り締まる「共謀罪」は、物言えぬ監視社会をつくり、安倍政権が進める「戦争する国」づくりのための現代版「治安維持法」と呼ぶべきもので、国民を欺くものです。
    1925年制定された治安維持法は、当初示された目的が拡大解釈され、共産主義者、社会主義者のみでなく、自由主義者をも弾圧されました。教育分野においても、教育労働者の解放をめざした新興教育運動関係者を捕らえた長野県「二・四事件」(1933年)や、子どもの生活に密着し、ものの見方・考え方・生き方を育てることを目的とした東北や北海道などでの生活綴方・生活図画教育運動への弾圧事件(1940~41年)をはじめ、全国各地で、治安維持法違反容疑で多くの教職員が検挙されました。このような中、長野県では、子どもたちを満蒙開拓青少年義勇軍に積極的に送り出す戦争協力体制を推進する教育が行われたのでした。
    私たち歴史教育者協議会(歴教協)は、戦前・戦中の反省に立ち、憲法を土台に、平和・民主主義・人権の教育と歴史の真実に基づく歴史教育・社会科教育を追究してきました。そして安倍政権が進める「戦争する国」の国民の育成に反対し、学問・教育の自由の大切さを主張してきました。「共謀罪」が、治安維持法のように学問の自由な活動を脅かすのみならず、労働組合や市民団体の活動を弾圧するための道具として使われるのではないかと危惧します。
    私たちは歴教協設立趣意書にあるように、「歴史教育は、げんみつに歴史学に立脚し、正しい教育理論にのみ依拠すべき」という立場から、教育が再び権力の介入により歪められてはならないと考え、「共謀罪」創設に反対します。

2017年2月20日 一般社団法人 歴史教育者協議会常任委員会

第68回沖縄大会、全国から615名の参加で、成功裡に終わる

以下の報告は、大会の一旦を記述しただけなので、詳しくは、大会増刊号を参照してください。

●歴史教育者協議会第68回沖縄大会は、2016年8月5日から7日まで、名護市民会館と琉球大学キャンパスで行われました。
 大会直前の7月22日には、東村高江のヘリパット建設現場に、本土からの機動隊も投入されての工事強行に見られるような「沖縄から安保と民主主義を問う」という大会テーマに関わる重大な状況のなかでの大会となりました。
● 全体会に、550名の参加。地域特別報告・シンポジュウムから多くのことを学ぶ。
全体会は、名護市民館で行われました。
 まず、『「沖縄」を日本全体の課題とするために』と題した、丸浜昭歴史教育者協議会副委員長からの「基調提案」があり、高江からの緊急現地報告の後に、地域特別報告として、名護市長の稲峰進さんから「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」と題して、沖縄情勢についてのお話がありました。
 全体会の司会をされた現地実行委員の上野さん自身も司会終了とともに高江に向かうとの発言に、緊張が走った一瞬でした。
 その後のシンポジュウムは「日米安保体制に抗う沖縄民衆のたたかいに学ぶ」と題して行われました。まず、元衆議院議員の古堅実吉さんからは、復帰前の人権抑圧と分断に対する民衆の闘いの実態や人民党議員として取り組んだ軌跡についてはなされ、さらに、沖縄大学名誉教授の新崎盛輝さんからは「構造的沖縄差別」との闘いを中心に報告がありました。
その上で沖縄県歴史教育者協議会のお二人の方の実践報告、下地治人さんからは「石嶺・沖縄から日本の政治を考える」との小学校6年生の実践、北上田源さんからは「在沖縄海兵隊の実態から軍隊の本質を考える」という大学での実践の報告がありました。
その後の討論も大変充実していて、時間が少ないのが残念でした。
● いくつかの分科会の感想から 
8月6日、7日の2日間を掛けて、琉球大学キャンパスの教育学部・法文学部棟で行われました。
第1分科会から第24分科会(第8分科会は行われず)の23の分科会と2つの特別分科会が行われ、活発な討論が展開されました。以下、いくつかの分科会参加者の感想を記述します。
・第11・12分科会(小学校3・4年生) 
 4年生の子どもたちが沖縄の学童疎開を、このように深く自分に引き寄せて考えていることに感動しました。今まで見えなかったものが見えるようになったという儀間先生のまとめにあるように、学んだ子どもたちに拍手です。
 また、琉球かすりという学習は、平和を象徴するもので、未来を織り成す子どもたちの希望が見えます。
・第14分科会(小学校6年生)
 教科書に書かれている歴史と自分が住んでいる地域の歴史は、同じなのか、違うのか、もし違うならそれはどうしてなのか、(報告者の)先生の「沖縄の自由民権運動」の実践から当時の沖縄の人々が置かれた状況がとてもリアルに感じられた。自由民権運動を地方史から捉え直すと差別の構図や人々の心が見えてくると思った。
・第21分科会(障がい児教育)
 今回の分科会で障がい児に対する教育の実践例を取り上げていて、障がい児に対する教育は普通学級でも生かせる内容もたくさんあり、学生としてこれからも実習や現場に出たときの参考になりました。
・第23分科会(社会科の学力と教育課題)
 授業実践を通して(具体的な事例)、授業の内容と方法について考えさせられた。
 子どもの思考に寄り添いながら、議論を展開できる教師を目指したい。
 今回のように、様々な実践に出会い、多くの人の意見や見方を知ることから、まず始めたい。
●地域に学ぶ集い
 沖縄大会の大会テーマ「沖縄から安保と民主主義を問う」にふさわしい内容の10の講座と2つの本部企画を合わせて12の集いが開かれ、約390名の方が参加で、どの講座も充実した内容でした。講座の感想をいくつか記述します。
・「高江ヘリパット建設阻止のたたかい」
 9年間のたたかいの一端に触れさせていただき、民意が反映されないもどかしさを痛感しました。8月5日の朝、N1裏テントの様子を見させていただき、機動隊が並んでいる光景の異様さに驚きました。
 日々の当たり前の暮らしが強引に壊されている怖ろしさを痛感しました。私自身の無知にも憤りを感じ、伝える大切さを感じました。
・「沖縄から見る日米の軍事一体化の実態」
 今まで米軍基地と自衛隊基地を区別して考えていました。しかし、今回のお話を聞いて、米軍と自衛隊が密接に結びついていることに気がつきました。安保法が通り集団的自衛権が行使されるようになると、自衛隊の武器だけでなく隊員もアメリカと共同してますます戦争に関わることになることが問題だと感じました。全てのアメリカの戦争に日本も関係していってしまうように思います。
・「若者たちと考える沖縄の平和運動」
 同年代の皆さんの口から語られる言葉に好感が持てました。信念や行動する勇気だけでなく、迷いや葛藤についても語ってもらえたことに共感できました。
 社会の問題を常に自分のこととしてとらえることは無理です。しかし、教師として、平和がおびやかされること、人権がおびやかされることについては問題意識を持てる子、問題提起する力がある子を育てていきたいと、みなさんの話を聞いて、改めて考えることができました。
・「国策に翻弄される地域の生活と教育」
 辺野古の人たちは語らなくなったと聞いていましたが、その実情や理由がよく分かりました。子どもたちにまで大きな影響を与えていることを考えると本当に恐ろしい。20年経過してもまだ先が見えない。どうして沖縄がこういう目にあわないといけないのか。国家は国民のためにあるはずなのに、国民不在の国の在り方には本当に腹が立ちます。学ぶ大切さも同感です。
● 閉会集会で、神奈川へのバトンタッチ
閉会集会では、神奈川県の若手の方(父親が沖縄出身で、神奈川で教員をしている)の
神奈川大会への抱負の発言と沖縄の若手からはこの大会で学んだことの発言がありました。
 さらに「18歳選挙権実施と歴教協の課題」「育鵬社教科書を用いてた実践報告」などの情勢を反映した発言がありました。
 恒例の引き継ぎでは、沖縄から泡盛とともに神奈川へのエールが贈られ、神奈川からは、今大会の「沖縄から安保と民主主義を問う」というテーマを引き継ぎながら、神奈川のテーマ「地域に生きる希望を子どもたちに」に生かすことで、神奈川大会の成功を目指したい、との決意が語られました。
 

第68回歴史教育者協議会沖縄大会 “沖縄を見て、聞いて、考えた大会”

1.「オール沖縄」に学ぶ
     沖縄大会は、8月5日~7日に名護市民会館・琉球大学を会場に開催し、615
名の参加を得て成功裏に終了しました。現地実行委員会とネットワーク、全国
の会員の協力のおかげです。ありがとうございました。
    沖縄大会では、「沖縄から安保と民主主義を問う」が追求されました。全体
会特別報告の稲嶺名護市長は、県民が示した新基地建設反対の民意は、法治国
家として最大限尊重すべき重要事項と訴え、新基地建設に県民が反対する理由
を理解するためにも、自らの目と耳と足で辺野古の現場を体感し、子ども達に
伝えて欲しいと述べました。東村高江の住民からヘリパッド工事を強行する現
地の緊迫した状況が報告されました。   
    シンポジウムのテーマは「日米安保体制に抗う沖縄民衆のたたかいに学ぶ」。
古堅元議員から伊江島「島ぐるみ闘争」が、新崎沖縄大学名誉教授から戦後の
基地と安全保障をめぐる沖縄の現代史が話されました。基地を沖縄の子どもた
ちに伝える実践も報告されました。小学六年実践は、身近な生活の税金の使わ
れ方から基地を学び、高校生・大学生への実践は、人を殺すという「軍の本質」
から、米軍が県民の安全を保障しているかを問うものでした。お話しと実践は、
日本の課題「安保」を沖縄の民衆運動と実践から考えさせるものでした。 
(全体会の様子は、琉球新報、沖縄タイムス、琉球朝日放送等で、「歴史教育
者へ基地を問う―稲嶺市長 全国大会で報告」「歴史教育社が沖縄から安保と
民主主義考える」などと報道されました。)
2.沖縄が問うもの
 10テーマの「地域に学ぶ集い」は、唯一の地上戦・沖縄戦と戦後沖縄の苦難
の歴史、基地があるがゆえの過酷な現実、その中で、自らの生活と子どもたち
の未来を守るために、「あきらめない闘い」を続ける人々の姿を伝えました。
沖縄戦の体験者が少なくなる中で、体験を若い世代に語り継ぐ取り組みも報告
されました。分科会は、第一テーマ「歴史と現代」、第二テーマ「地域・子ど
も・授業」の二三分科会と特設分科会として日韓歴史教育交流シンポジウムが
行われた。沖縄の問題、憲法や安全保障の問題と共に、地域の掘りおこしや地
域に根ざした実践が報告され討論されました。「沖縄」が抱えている問題を、
日本の問題としていかに考えていくかを問う大会となりました。
 8日には現地見学Aコース「沖縄から安保を考える」に参加しました。現地
ガイドは元高校の先生。実体験に基づく説明には胸打たれました。「嘉手納基
地の1日の光熱費は1000万円です」「普天間小学校の移転計画があり、経費は
28億円。そのお金はないと言ったが、基地内の米軍の子どもたちの学校は38億
円で建設した」には理不尽さを感じました。5月に起きた殺害事件の犠牲にな
った女性の葬儀については、葬儀の写真を掲載さした新聞を見せながら説明し
ました。遺族の、県民の無念さが伝わりました。
 9日には南風原文化センターを訪れました。学芸員から、文化センターをど
のような思いで建設したのかを聞くことが出来ました。沖縄戦、戦後の苦難の
中でたくましく生きぬいてきた南風原の人々の歴史を、こどもたちに伝えてい
こうとする姿に感銘を受けました。
                                                                                                              (事務局長 桜井)

高校教科書検定に抗議し、新検定基準の撤回を求める決議

高校教科書検定に抗議し、新検定基準の撤回を求める決議
 
 安倍政権の下、文部科学省は2014年1月に新検定基準を追加告示し、
この新規準に基づき昨年の中学校社会科教科書に「続いて2017年度用
高等学校地理歴史・公民科教科書への初めての検定が行われた。新検
定基準の主な内容は、①「通説的な見解がない数字などの事項につい
て記述する場合には、通説的な見解がないこと」を明示すること、②
「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高
裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされてい
ること」というものだった。
 ある「日本史A」の教科書では、3・1独立運動の犠牲者数、関東大
震災時の朝鮮人虐殺者数、南京大虐殺の犠牲者数について、これまで
は歴史研究の成果に基づいて本文に具体的な数字を記述できたが、①の
検定基準に基づいて「おびただしい数」とされ、側註にはいくつかの数
字を列記し「人数は定まっていない」と記述する検定結果となった。こ
れは、たとえ数字の根拠が学問上薄弱であっても、ある主張が存在すれ
ば、「通説的な見解」はないとされ、数字を本文に記述させないという
ものである。このような恣意的な検定は、学問研究に対する不当な政治
的介入であり、そのねらいは過去の侵略と植民地支配の事実を極力薄め
ようとするものであると言わざるをえない。
 また、ある「現代社会」教科書の「積極的平和主義」に関する検定で
は、②の検定基準に基づいて、安倍政権の見解である「国際協調主義に
基づく考え方」「専守防衛や軍縮、国連PKOへの積極的参加」「国際
社会の平和と安全及び繁栄の確保に、積極的に寄与していこうとするも
の」などが書き加えさせられている。安保・自衛隊問題だけでなく、原
子力発電、日本軍「慰安婦」問題、領土問題などについても政府見解の
みを一方的に押しつける検定が行われた。これではまるで戦前の国定教
科書の再現であり、子どもの知る権利、学習権に対する重大な侵害であ
る。政治が教育を利用し、子どもたちを軍国少年・少女に仕立て上げ、
戦争に協力させた戦前の歴史を忘れてはならない。
 以上のように、今回の高校教科書の検定は、安倍政権による新検定基
準が適用され、従来にも増して憲法で保障された学問の自由、言論・表
現の自由を乱暴に侵害するものであった。そのねらいは、政府見解を一
方的に教科書に書かせることで、子どもたちの歴史認識と現代認識を画
一化し、安倍政権のめざす「戦争する国」を担う「人材」に仕立てよう
とするものであり、私たちは断じて容認することはできない。
 私たち歴史教育者協議会は、今回の高校地理歴史・公民教科書の検定
に強く抗議するとともに、新検定基準を直ちに撤回することを求めるも
のである。
 
2016年8月5日  
                                                         一般社団法人歴史教育者協議会会員集会
 

憲法改正の危機の中で、 子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう

         憲法改正の危機の中で、子どもたちを主権者に育てる教育を広げよう
                     ―日本国憲法公布70年に、歴教協からの呼びかけ― 

 
     7月10日のはじめて18選挙権が実現した参議院選挙の結果は、改憲勢力が3分の2以
上の議席を得ました。しかし、憲法改正に反対する市民と4野党の共闘の力は発揮さ
れ、11の1人区で議席を得ました。沖縄・福島では、現職大臣が落選しました。
  とくに沖縄では、「オール沖縄」の候補が、沖縄・北方担当大臣に10万票以上の差
をつけ圧勝し、現職の沖縄選挙区選出の自民党議員不在となりました。新基地建設反
対で一致する「オール沖縄」の運動は、日本の新しい未来を切り開きました。これに
対し、安倍政権は、県民の民意を無視し7月11日から東村高江ヘリパッド建設を強行し、
抗議する住民を機動隊が力ずくで排除しています。また、辺野古新基地建設を巡って
沖縄県を提訴しました。これは民主主義に反し、沖縄県民に憲法が保障する生存権を
認めないものです。
    改憲勢力が3分の2を占めたとはいえ、国民は憲法改正、とくに第9条改正に支持を与
えてはいません。どの世論調査でも9条改憲に反対する世論が多数であり、共同通信社
の出口調査によれば、今回の選挙でも「安倍政権下での憲法改正に反対」が50%でした。
2012年に自民党が発表した憲法改正草案は、日本国憲法3原則(国民主権・基本的人権
の尊重・平和主義)を否定する内容です。特に9条第2項を改正し、国防軍を創設し、新
たに「緊急事態条項」を入れています。安倍政権は参院選において、憲法改正を争点に
することはありませんでした。
 初めての18歳選挙権の参院選での18・19歳の投票率は45%台であり、自民党に投票し
た率は40%でした。この間、学校現場や各地で「主権者教育」が実践され、学習会が取
り組まれました。「安保法制」反対に声を上げた高校生・大学生を中心に、「未来は自
分たちが決める」と若者独自の取り組みも行われました。
 教育現場においては、「政治的中立」の名の下に、管理が強められ、教員を「萎縮」
させる雰囲気が生まれています。自民党文部科学部会は、ホームページで「学校教育に
おける政治的中立性についての実態調査」を呼びかけました。呼びかけ文には「教育現
場の中には、『子どもたちを戦場に送るな』と主張し、中立性を逸脱した教育を行う先
生方がいる」とあり、ネット上で批判されると「安保関連法案は廃止すべきだ」と主張
するとの表現に差し替えました。これは教育への政治介入であり、密告を奨励するとし
て批判が集中したのは当然です。政権党が「実態調査」を行ったこと自体が、教育の自
由への侵害で、教員を一層、「萎縮」に追い込むものです。
 
 歴教協は、子どもたちを主権者として育てることをめざし、事実を積み上げ真実を見
抜く目を育てることに努めてきました。私たちは、憲法公布70年の今年、施行70年の20
17年を見据えて、主権者を育てる教育を広げることを呼びかけます。
 
2016年8月5日
               
                                                                                       一般社団法人歴史教育者協議会会員集会