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【声明】自衛隊海外派兵と武力行使のための恒久法案提出を阻止しよう 2001年アメリカでおきた「9.11テロ」以降、自衛隊はアフガニスタン・イラクという戦場へ、戦後初めて派兵されました。現在、福田自公連立内閣は、それを可能にした新テロ特措法の期限が切れる来年1月15日以降も、その延長をはかり、さらに自衛隊の海外派兵の拡大・強化をねらっています。 アメリカは先制攻撃戦略のもと、世界の米軍基地の再編と同盟国への新たな役割分担の拡大を求めています。防衛庁を防衛省に格上げした日本政府はこれに応え在日米軍基地の再編強化に努め、軍事的な日米一体化をめざしているのです。自民党はすでに石破試案にもとづいて恒久法案を準備し、公明党との調整もすすんでいます。民主党のなかでは海外派兵のための「基本法」制定の主張も浮上し、超党派ですすめる体制づくりもすすんでいます。このように、派兵の地域や期間、任務、武器使用に関する制限をほぼ撤廃する恒久法の制定を、「国際平和協力」の名目で強行しようとしています。これは、日本国憲法9条を否定するものにほかなりません。 わたしたちは、創立以来、日本国憲法にもとづいた教育、平和と民主主義をめざす主権者を育てる社会科教育の実践を積み重ねてきました。それだけに9条を中心とした改憲の動きに対して、「九条の会」をはじめとした国民的な運動とも手をつなぎ反対してきました。平和主義は、戦争そのものを違法とする国際社会の流れの最先端をいくものであり、これを国際社会に活かすことこそ、日本の「国際平和協力」であり、自衛隊のイラク派兵を違憲・違法とした4月17日の名古屋高裁の判決は、そのことを確認したものです。 今、提出をめざしている恒久法は、この判決が違憲とした航空自衛隊の武装兵士の輸送をはじめ、これまでの政府答弁からも逸脱し、自衛隊の海外派兵と集団的自衛権に本格的に踏み込むものです。そして、アメリカの戦争に世界的な規模で参加しようとするものです。しかし、今、アメリカの戦争政策の破綻が目立つなか、多国籍軍のイラク派遣の根拠のひとつであった国連決議の「駐留」期限切れが今年末に迫っています。自衛隊の「駐留」の根拠を失うという局面を迎え、恒久法をめざす勢力は内外に大きな矛盾をかかえています。 改憲に反対し、9条を活かせという声をさらに大きくし、自衛隊海外派兵と武力行使のための恒久法案提出を阻止する全国的な運動を展開しましょう。 2008年8月2日 歴史教育者協議会第60回東京大会 会員総会 |
【声明】新学習指導要領の批判と学習の運動を進め、 未来を切り拓く社会科教育を創造しよう 3月28日告示の新学習指導要領について、歴史教育者協議会は、4月10日「父母・市民・教育関係者の願いを裏切る小・中学校新指導要領に抗議し、撤回を求める」声明を出し、2006年教育基本法の下での初の学習指導要領を厳しく批判しました。 文部科学省は移行措置による前倒し実施をしてまで、2006年教育基本法の具体化を現場に押し付けようとしています。この教育基本法がねらう教育は、全国一斉学力テストに代表される新自由主義的な格差・選別と競争の教育と、道徳や奉仕を強制する新国家主義の教育です。政府が目指す教育のモデルとされた「イギリスの教育改革」は失敗し、世界には新自由主義反対の声も大きくなっています。教育の分野で、新自由主義的教育・新国家主義的教育に対抗する私たちの民主的教育を実現していくことが求められています。 来年の7月に創立60年を迎える歴史教育者協議会は、子どもたちと、地域に根ざし平和と民主主義、主権者の育成を目指した授業実践を創造してきました。また、地域の掘り起こし、世界の人々と連帯する科学的な歴史・社会科教育を追究してきました。教育課程及び授業は、地域とそこに学ぶ子どもの実態に応じて、教職員の英知で創られるものです。新学習指導要領の内容をどう教えるかという教育の営みは、現場教職員に委ねられています。60年におよぶ戦後歴史教育・社会科教育実践の成果を活かして、真に未来を切り拓く社会科教育・歴史教育を創造していきましょう。そのために、新学習指導要領の批判・学習会を全国各地で展開しましょう。 2008年8月2日 歴史教育者協議会第60回東京大会 会員総会 |
【決議】世界遺産都市奈良・平城京跡を縦断する高速道路の都市計画決定に抗議する 奈良県都市計画審議会は、京奈和自動車道大和北道路の環境影響評価書のルート計画を承認し、3月、奈良県は「都市計画決定」を強行しました。世界遺産都市奈良は、今年度中に予算編成に向けて高速道「事業決定」へという大きな危機を迎えています。 世界遺産「古都奈良の文化財」の中核、国特別史跡である平城宮跡の直近、緩衝地帯の内東端を地下トンネルで通過し、その後平城京域を高架道路で通過させようというものです。木簡が心配です。「道路建設による地下水の変動は数p程度」との予測値は地下水位の安全性の証明のない中での地下遺構も含めて致命的な影響が懸念されます。深度工法で木簡や遺構は守られるとしますが、開削工法となるトンネル出入り口付近の遺構は破壊され、地盤沈下や地下水流の変動についても直近東に活断層をもつ地です。保証はありません。 地上に出た高架橋道路は世界遺産都市奈良の歴史的景観を大きく悪化させます。トンネル出入り口の排気塔、北は8m、南は30mという巨大なものです。北は佐紀盾列古墳群の雄ウワナベ古墳の北側、南は大安寺の西側に予定され、ともに世界遺産追加登録候補地です。高架橋と排気塔による景観破壊は深刻です。排気塔を換気塔と強弁しますが、盆地の中の排気ガス等の大気汚染は文化遺産の保護や市民の健康に甚大な被害を及ぼすでしょう。 文化庁は「計画は、世界遺産の価値を減ずる結果となるような考古学的に重要な地域における如何なる地下水位の変動も引き起こすことなく、埋蔵文化財と景観に如何なる否定的な影響を及ぼすものではない」と断定して世界遺産委員会に報告しています。日本の文化遺産の保全と継承そして世界遺産主管省庁のこの責任放棄を厳しく問わなければなりません。 平城京跡に羅城跡が発見され、十条関連条坊遺構の発見が奈良盆地の条里制遺構と重大にかかわる地に高速道の高架橋が予定され、大商業地域が工事を始めようとしています。 2010年、奈良県・奈良市は、平城遷都千三百年祭を祝おうといいます。国土交通省と「平城宮跡国営公園」構想も謳いあげています。「平城宮跡中心のお祝い」に耳目を集めて、高速道路計画を強行し、「奈良らしい街づくり」に背を向けた動きも又急です。 1960年代、私たちは「平城京・宮跡のような著名な遺跡が破壊されたら全国の文化遺産はどうなるのか」と「事業決定」を覆して近鉄車庫を断念させ、「都市計画決定」後に奈良バイパス通過をやめさせた大きな国民運動の財産を持っています。 世界遺産条約にもとづく登録遺産を「公共事業による破壊」により「遺産危機リスト」に入れるのかが問われているのです。世界の目も注がれています。 私たちは、今度の高速道路計画の「都市計画決定」に強く抗議するとともに、文化庁の見解に強く抗議するものです。私たちは、世界遺産都市奈良の文化遺産を守り、高速道の平城京跡域内に建設しないようさらに運動を強めるものです。 2008年8月2日 歴史教育者協議会第60回東京大会 会員総会 |