歴教協の声明(2003年〜2004/8)
過去声明  2003〜2004 2001〜2002 1998〜2000 
--------------------------------------------------------------------------------------
▼ 高橋史朗氏を埼玉県教育委員に選任したことに抗議する 2004/12/22
▼ 東京都教育委員会による扶桑社版歴史教科書の採択に抗議する2004/08/29
▼ 世界遺産都市奈良・平城京の真ん中に高速道路は許されません2004/07/31
▼ 日本国憲法第9条を守る広範な市民運動に連帯しよう2004/07/31
▼ 東京都立中高一貫校への東京都教育委員会による扶桑社版歴史教科書の採択に反対する2004/07/31
▼ 高嶋教科書訴訟[平成14年(オ)1615号]の東京高裁判決を破棄するよう要請します2004/07/31
▼ 与党の教育基本法改正協議会中間報告を批判する 2004/06/30
▼ 大学入試センター試験問題への不当な政治的圧力に抗議する 2004/05/20
▼ 米英などのイラク侵略戦争に抗議し戦争の即時停止を求めるする決議 2004/05/20
▼ 教育内容への不当な介入に抗議する 2004/05/20
▼ 2005年を前に、「つくる会」教科書の採択を阻止し教科書と教育の危機に立ち向かおう 2004/05/20
▼ 国立大学法人法の強行採決に抗議し、教育基本法の改悪を許さない運動を広げよう!2003/7/31
▼ イラク復興支援特別措置法の強行成立に抗議し、その発動を許さない決議2003/7/31
▼ 世界遺産・平城宮・京跡を高速道路計画から守る決議2003/7/31
▼ 外国人学校卒業生の国立大学受験資格の一部改正に関して(意見)2003/4/11
▼ 中教審の教育基本法改悪の答申に反対する決議2003/3/29
▼ 米英などのイラク侵略戦争に抗議し戦争の即時停止を求める決議2003/3/29
▼ 小泉首相の靖国神社参拝に抗議する2003/1/27

高橋史朗氏を埼玉県教育委員に選任したことに抗議する

  上田清司埼玉県知事は、12月20日の県議会最終日に高橋史朗氏を県教育委員に選任する議案を提出し、自民党などの賛成で可決した。しかし、今回の決定は以下の点で重大な問題である。
第1に、都道府県の教育委員は教科書採択にかかわって大きな権限を有している。市町村立義務教育諸学校(公立小中学校)については「指導、助言又は援助」をする立場にあり、とくに最近は都道府県立盲聾養護学校・中高一貫の「中等教育学校」については、教育委員自身が採択の決定をする事態も起きている。高橋氏は扶桑社版中学校歴史教科書の監修者の一人であり、その作成を中心的に担ってきた人物である。高橋氏が副会長を務めていた「新しい歴史教科書をつくる会」は、自ら作成した扶桑社版中学校歴史教科書・公民教科書の採択を推進しようと、一部政治家とともに採択地区の採択基準を変えさせるなど政治運動を行っている団体である。こうした人物が教育委員になって教科書採択やその指導等にかかわることは、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」(教育基本法第10条1項)や、「教育委員会の委員は、自己の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない」とした地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)第13条に抵触するものである。
第2に、高橋氏はこれまで、国際的に意義が認められている科学的な性教育や人権教育に対し、それらを攻撃・否定する発言を繰り返している。また、高橋氏が副会長を務めた「新しい歴史教科書をつくる会」は、きわめて排外的で一国中心的な視点から、中国・韓国・朝鮮をはじめ近隣諸国を敵視・軽視し、近代日本政府が起こしたアジアに対する侵略戦争についても、従来あった教科書記述を「自虐史観」「東京裁判史観」と非難し、「自衛戦争」「アジア解放のための戦争」と主張し、国内外から多くの批判を受けている団体である。さらに高橋氏は「新しい教育基本法を求める会」の事務局長を務め、現在は「民間教育臨調」の運営委員長を務めている。そして、現行の教育基本法を「GHQの強い指導」のもとに制定されたと一方的に決めつけ、「愛国心の育成」「道徳教育の強化」「国家と地域社会への奉仕」など、現行教育基本法の示す「個人の尊厳」「人格の完成」という理念とまったく相反する徳目を盛り込むよう、森喜朗首相、中曽根弘文内閣総理大臣補佐官、大島理森文部大臣、森山眞弓自由民主党教育改革実施本部長、保利耕輔自由民主党教育基本法等研究グループ主査文部大臣(いずれも当時)に提出する(2000年10月)など精力的に働きかけ、2000年末に出された「教育改革国民会議報告−教育を変える17の提案−」に色濃く反映させてきた。以上の点でも高橋氏は、地教行法第11条「委員は、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。」に抵触するきわめて政治的な人物である。
第3に、教育基本法第10条2項には「教育行政は、この自覚(=前述第1項を指す)のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とある。今回の上田知事および賛成した県議会議員の行動は、「民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意」(教育基本法前文)、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」(日本国憲法前文)したことを否定する暴挙であるとともに、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」(日本国憲法第99条)、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」(日本国憲法第15条2項)という公務員の資質に欠ける不当な行為である。
私たちは高橋史朗氏を県教育委員に選任した上田知事、県議会に強く抗議し、即時選任の撤回を求めるものである。
2004年12月20日 歴史教育者協議会常任委員会

東京都教育委員会による扶桑社版歴史教科書の採択に抗議する

 8月26日、東京都教育委員会は、多数の団体・個人による要請書や署名に表された都民・教育関係者の声を無視して、来春台東地区に開校する都立中高一貫校の中学生用教科書として、扶桑社版歴史教科書の採択を決定した。
 今回の採択決定は、二重の意味で到底許すことのできないものである。
 第一に、扶桑社版歴史教科書は、現に行われているイラク侵略戦争のようなアメリカの戦争にこれから子どもたちを動員することをねらうものであり、このような憲法違反の教科書を子どもたちに渡すことは絶対に認めることができない。
 扶桑社版教科書は、そのねらいを達するために、近代日本の行った戦争がアジアに対する侵略戦争だった事実を無視し、戦争を正当化するためにつくられた「大東亜戦争」の用語まで使用して、これを自衛戦争、あるいはアジア解放戦争だったと偽っている。また、戦争の反省の上に立って制定された日本国憲法を敵視し、大日本帝国憲法や教育勅語を賛美して、子どもたちに天皇主権の国家体制を正しいものと教えこもうとしている。さらに公民教科書では、憲法にも規定されていない国民の国防の義務を強調し、核兵器まで肯定している。 扶桑社版教科書のこれらの内容は、戦後の歴史研究・歴史数百の成果をすべて否定し、憲法第9条のもとでつちかわれてきた国民の平和への意識を根底からくつがえすことをねらうものである。また平和と民主主義を前進させてきた歴史の流れを逆行させるものである。「新しい歴史教科書をつくる会」が、社会的につくられた性差を克服し男女が等しく人間として尊重される社会をめざす教育に対し、異常な攻撃をかけていることも、歴史を逆行させようとするかれらの考え方をよく示している。それに同調する決定を行った東京都教育委員会の姿勢は許されない。
 扶桑社版教科書は、戦争の20世紀をへて、何よりも21世紀に平和のアジアを構築することを願うアジア諸国民、日本国民、そして東京都民の願いに敵対するものであり、日本とアジアの友好と信頼を破壊するきわめて有害な教科書である。そのことは何よりも、2001年の教科書採択において、東京・愛媛の一部の障害児学校を除き国公立の中学校では1冊も採択されなかつたことにあらわれている。ここに示された都民・国民・アジア諸国民の願いを無視することは許されない。
 第二に、きわめて不当・不公正な採択方法がとられたことである。2000年以来の「新しい歴史教科書をつくる会」の策動によって、扶桑社版教科書を採択させる目的で、学校現場や教育関係者などの意見にもとづくのでなく教育委員会の独断で採択を決定するシステムに改められた。これ自体きわめて不公正であるばかりでなく、教員の役割を定めた学校教育法第28条に違反し、教育の条理にも反するものであり、教員が教科書の選定にあたって不可欠の役割を与えられるべきだとしたILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」にも反している。今回も東京都教育委員会は、はじめに結論ありきのごとく、ほとんど審議もせずに扶桑社版歴史教科書の採択を決定した。しかも採択に先立つ6月14日、横山洋吉教育長が、公然と東京都教育長の肩書で扶桑社版教科書を支援する国会議員・地方議員など政治家の集会にパネリストとして参加したことは、公務員として許されない不当行為であり、教育に対する政治の支配介入を禁じた教育基本法第10条に違反する行為である。
 東京都教育委員会は、「日の丸・君が代」の異常なまでの強制、男女平等をめざす教育、性教育などへの異常な攻撃をはじめとして、学校を命令と無条件の服従の場、国家に喜んで奉仕し生命さえ投げ出す軍国少年少女育成の場、戦時下の兵営に変えようとしている。扶桑社版教科書の採択は教育内容面から学校の兵営化をすすめるものであり、今日の異常な教育行政と一体をなすものである。それは、「愛国心」と国家への奉仕の精神の育成を教育の目的にすえようとする教育基本法改悪、憲法第9条の制約をとりはらって文字通りの戦争国家に仕上げる憲法改悪のうごきにつながっている。
 私たちは、そうしたなかで行われた今回の扶桑社版教科書の採択、および男女平等教育に関する不当な決定に対し、強い怒りをこめて抗議する。そして、扶桑社版教科書の採択を直ちに撤回し、学校現場・保護者・教育関係者などの意見にもとづき、採択をやり直すことを要求する。
 同時に私たちは、扶桑社版教科書の採択に反対する世論のひろがりをさらに大きくし、採択制度の改善にとりくみつつ、2005年の全国一斉採択において、扶桑社版教科書を1冊たりとも子どもたちに渡さない決意を、あらためて表明する。
2004年8月29日
                               歴史教育者協議会常任委員会


世界遺産都市奈良・平城京の真ん中に
高速道路は許されません

 世界遺産特別史跡平城宮跡・京跡は今、国土交遺省による京奈和自動車道の大和北道路計画により大きな危機を迎えています。
 国交省は、矢継ぎ早に審議会を設け、地下水検討委員会の「地下トンネル可」、文化財検討委員会の「平城宮跡直下は避ける」との結論を受けて、有識者委員会は昨年10年「特別史跡平城宮跡を避け、緩衝地帯でも世界遺産核ゾーン史跡となるべく隔離した地下トンネルと高架でつなぐ」案を「推奨案」として提出しました。
「地下水の、地下トンネル工事による変動は軽微」というまったく非科学的な地下水検討委員会報告を鵜呑みにした案です。今、環境評価調査検討委員会(環境アセスメント)の下で「計画決定」のための作業が始まりました。
「推奨案」は、世界遺産緩衝地帯すれすれの地を南北に奈良山から大安寺付近まで地下トンネルで、その南は高架構造というものです。平城京左京を串刺し、奈良市街地を縦断するもののです。トンネル出入口は、当時の大官大寺大安寺や平城京東市があった地です。いずれも奈良世界遺産追加登録の有力候補なのです。
 発掘調査は平城宮跡がやっと40%たらず、京跡はまだ4%です。歴史の証言者木簡の消滅をはじめ遺跡や遺構の破壊の大きな危機を迎えます。
 日本政府は、ユネスコ世界遺産委員会にも昨年の第27回委員会まで報告を放置し、今年蘇州での第28回委員会にはやっと「推奨案」までの経緯と、先の「地下水位低下軽微」との報告に加え、奈良での交通事故発生率の2倍たらずを9倍などとする虚偽の報告を行いました。しかも、世界遺産委員会が出した「地下水位に影響を与えない」とした決議案に、「修正動議」まで出し「世界遺産価値の保全のため最小限に保たれることを確保する」とトーンダウンせざるをえない場に追い込んだのです。
 1960年代、私たちは、近鉄の車庫そして国道バイパス建設に抗して、現在の古都奈良を守る大成果を上げました。ともに「計画決定」や「事業決定」以後の取り組みでした。
 世界遺産都市奈良平城京を守る取り組みは、これからが本番です。地下水検討委員会のシミュレーションの欺瞞や報告された交通渋滞と事故率の欺瞞を明確にせねばなりません。
 奈良の公共交通機関は、アイドリングストップを実施して4年。しかし、大気汚染は現状維持がやっとなのです。大仏の汚染が指摘され、室内の石造仏の摩耗が心配されています。地下トンネルからの排気ガスは、盆地の奈良にとっては、市民の健康への影響も合めて看過できるものではありません。
トンネル入口付近の工事による文化財の「踏み荒らし」の危機も心配です。
 この道路が、実は四全総の近線外環状高規格高速道の一環で、大和北道路だけで4千億円、県民一人15万円という公共事業の無駄遭いを隠したままです。
 国内外でこの事実を広めねばなりません。日本政府に、国土交通省に、奈良県・奈良市に、「推奨案の白紙撒回」を強く訴え要請するものです。そして世界遺産委員会・世界遺産センターに要請の行動等を行うものです。
 世界遺産条約のスローガンは“平和と環境を守る”です。東アジアで唯一といえる古代都城が鮮やかに学べる場が、平城京・宮跡です。しかも、文化的景観として世界遺産に登録された山々と緑いっぱい、歴史いっぱいの景観があります。日本の宝から世界の宝となった世界遺産都市奈良です。12になった日本の世界遺産の中で初めて「政府の行為による世界遺産の大改変」が行われようとしているのです。絶対に許すわけにはいきません。しっかり、子どもに、未来に託せるよう、高速道路から世界遺産・平城京を守る運動を力強く進めることをここに誓い合うものです。
2004年7月31日
                        歴史教育者協議会第56回全国大会会員総会

 日本国憲法第9条を守る広範な市民的運動に連帯しよう

 日本国民にとって宝物であり、世界中の平和を願う人たちにとっても共通の財産である日本国憲法第9条が今、大変な危機に瀕しています。
 その第一の根拠は小泉内閣によるイラクにおける米英軍中心の多国籍軍への参加です。戦場であるイラクへの自衛隊派兵そのものが日本国憲法第9条に反したものでしたが、多国籍軍への参加は、それをさらに踏み越える段階に入ったことを意味しています。従来は、政府自体が「武力行使を伴う多国籍軍への自衛隊の参加は、憲法上許されない」としていましたが、その自らの見解すらかなぐり捨てて最高法規である日本国憲法を逸脱することを行ったことは絶対に許されるものでありません。
 第二の根拠は、自民党が「戦力の保持」「集団的自衛権の行使」「国防の義務」などを明記する憲法改定を公然と明らかにしていることにあります。さらに民主党も「国連が決定すれば自衛隊の海外派兵もできる」ことを憲法で明記する方針を明らかにしており、公明党も「憲法9条改定も議論の対象にする」としています。このことは国会で多数を占める勢力が日本国憲法第9条の改定をめざしていることを意味しています。まさに日本国憲法第9条をめぐる動きは戦後最大の転機を迎えているといってよいでしょう。
 しかし、日本国憲法第9条は戦争のない平和な21世紀を創る羅針盤であることにはかわりありません。
 その理由の第一は、日本国憲法第9条の生命力にあります。その内容の基軸である「戦争放棄」「戦力不保持」の規定は、20世紀という「戦争の世紀」にあって、それに抗し戦争の違法化をめざす人類の努力がかたむけられ、国際連合憲章とともに日本国憲法第9条に結実したという事実です。そして、1999年のハーグ世界平和市民会議が世界のどの国でもこうした憲法を持つことを呼びかけるなど、憲法第9条の生命力は国際社会の中で現代も輝き続けているのです。
 第二は、日本国憲法第9条が、国民の戦争の反省と平和への希求の念から誕生したという歴史的背景によるものです。国民世論で、今なお6割を超す人が改悪に反対している事実はそこからきているものです。
 歴史教育者協議会は、一貫して日本国憲法を支持し、「平和的社会の形成者」を育成することを目標に研究と教育実践を展開してきました。そうした立場から日本国憲法第9条を改悪しようとする動きを絶対に容認することはできません。
 去る6月10日に井上ひさし氏や大江健三郎氏など9氏が「9条の会」を発足させ、「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐはじめる」ことを叫びかけました。歴史教育者協議会は、21世紀に平和な世界を創る子どもたちを育てるためにも、この呼びかけに積極的に賛同し、広範な市民的運動に連帯して取り組む決意を表明するものです。
2004年7月31日
                        歴史教育者協議会第56回全国大会会員総会

  東京都立中高一貫校への東京都教育委員会による
     扶桑社版歴史教科書の採択に反対する


 教科書の選定・採択については、何よりも現場教職員の判断を尊重すべきです。子どもの発達段階と実態をよく知って、その子どもたちにどんなすじみちと方法で授業をすることが子どもの学力を伸ばすことになるのかを、もっともよくつかんでいるのは現場教職員だからです。そのためにはどの教科書がもっとも適切なのかを、現場教職員が子ども・保護者など関係者の意見にも耳を傾けながら、じっくりと判断して教科書を選ぶこと、それが可能となるような条件を整えることは、これからの教育を良くするためにいま求められている大事なことがらの一つです。
 そのことが、国内的にも国際的にもひろく承認された原則であることは、次の事実からも明らかです。すなわち、ILO・ユネスコによる「教員の地位に関する勧告」でほ、「教員は、………教科書の選定ならびに教育方法の適用について、不可欠の役割を与えられるべき」だと述べています。また、1997年以降「将来的には学校単位の採択の実現にむけて検討していく必要がある」「当面の措置として、教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映するよう」などとの閣議決定が繰り返し行われています。
 ところが、扶桑社版歴史・公民教科書の発行と採択を推進した「新しい歴史教科書をつくる会」は、自らの教科書の採択を有利に運ぶ目的をもって、教科書採択に関する前記の原則を破壊することに狂奔しています。2000年以来、一部の右翼的政治家と結託して、現場教職員の意見を聞かずに教育委員会が採択権を独占的に行使する制度に改めるよう、全国各地で政治的圧力をかけ、それを実現しつつあるのです。
 その行き着く先がどうなるのかを如実に示す出来事がおこりました。去る6月14日、扶桑社版教科書を支援する議員集国が主催し、自民党が協力して、全国の国会議員・地方議員の集会が開かれました。その集会は、扶桑社版教科書の検定と採択を有利に進めるためにどんな運動をすすめるかを協議し意思統一するための集会でしたが、そこで河村建夫文部科学大臣があいさつし、東京都の横山洋吉教育長がパネリストとして参加し発言しています。扶桑社版の教科書の改訂版はいま文部科学省で検定を受けている最中です。2005年に開校する東京都立中高一貫校の中学校教科書は今年8月までに採択が行われます。検定権を現に行使している文部科学大臣と、採択権をもつと自称している東京都教育長が、特定の教科書の検定・採択を支援する集会に出席したということは、文部科学省と東京都教育委員会が、公正な職務の執行を放棄し、特定の教科書の検定・採択を有利に進めることを自ら宣言したことにほかなりません。公務員として絶対に許されないことです。
 さらに東京都教育委員会と石原都知事は、生徒・教職員の憲法で保障された内心の自由・表現の自由を一切認めない、ファッショ的な学校管理と「日の丸・君が代」強制を行っています。
 このような状況のもとで、2005年開校の東京都立台東地区中高一貫校では、扶桑社版歴史教科書の採択が東京都教育委員会の強権をもって押しつけられる危険性が強まっています。扶桑社版歴史・公民教科書は、日本国憲法の理念を否定し、過去の侵略戦争を美化すると同時に、核兵器を肯定し、現在の戦争を賛美してそれに国民を動員しようとする考え方につらぬかれた教科書です。まさに憲法9条改悪を推進する教科書といわなければなりません。このような特異な歴史認識と政治的思想を植えつけようとする教科書を、教員・保護者の意見も聞かずに、一部政治家の圧力をバックにして強引に押しつけようとすることは、日本国憲法・教育基本法に照らしても、教育本来の条理に照らしても到底許すことはできません。私たちは、東京都教育委員会による扶桑社版教科書の採択に強く反対します。
 問題はそれだけではありません。「新しい歴史教科書をつくる会」と、それにつらなる憲法・教育基本法改悪をねらう政治家たちは、今年の東京都立中高一貫校での採択をテコにして、2005年の中学校教科書の全国一斉採択で扶桑社版教科書の採択の大幅増をねらっています。私たちは2001年の扶桑社版教科書採択阻止の経験に学び、ひろく市民とともに、歴史の事実をゆがめアジアと世界の平和の実現を妨げる教科書にたいする批判を強めます。
 また、「新しい歴史教科書をつくる会」などの策動に反対し、2005年の中学校教科書採択までに、教科書の選定・採択についてのひろく承認された前記の原則を各地域で確立するよう、運動を強めます。
2004年7月31日
                        歴史教育者協議会第56回全国大会会員総会

最高裁判所第一小法廷 御中
  高嶋教科書訴松[平成14年(オ)1615号]の
     東京高裁判決を破棄するよう要請します


 現在、貴裁判所において、標記訴訟の上告審の審理が大詰めをむかえていることと存じます。本件訴訟は原告高嶋伸欣氏の執筆にかかる教科書原稿にたいする検定の違法性が問われているものであり、社会科教育にたずさわり、教科書にも深いかかわりをもつ者として、重大な関心を持って見守っています。
 いうまでもなく、教科書は今日の学校教育のなかで使用される教材として重要な位置をしめています。その教科書が、行政機関の一つである文部科学省の検定に合格してはじめて使用が許されるという教科書制度のありかたや、検定の基準とされる学習指導要領の内容の妥当性について、社会科のみならず、各教科関係者からさまざまな問題点がいま指摘されています。かりにそのことはしばらくおくとしても、少なくとも検定が窓意的なものであってはならず、公正なものでなくてはならないことは、当然です。
 本件訴訟においても、その点が大きな問題とされています。なかでも、4点にわたる具体的争点のうち、「脱亜論」と「氷川清話」のアジア観の比較については、第一審において、検定官自身が資料の読み誤りによる間違った修正指示だったことを認め、判決でも当該検定意見による修正指示が違法であるとされたところです。さらに、湾岸戦争時の掃海艇派遣に関してアジア諸国への配慮の必要性にふれた記述に対する修正指示についても、同じく第一審において、検定官自身が「個人的意見」を紛れこませたことを認め、判決でも、そのような検定に法的根拠がなく違法であるとの判断が示されました。
 これらの検定意見にもとづく教科書の改ざんは、何よりも事実・真実にもとづいて行われなければならない教育を政府の権力によってゆがめるものであり、事実・真実を学ぶ児童生徒の権利を侵害するものです。その意味で教育の根幹にかかわるきわめて重大な問題をはらんでいるといわなければなりません。ところが第二番の東京高等裁判所は、これらの重大な問題について真撃にうけとめて慎重な審理を行うことなく、また新たな証拠調べもないままに、あたかも先に結論ありきのごとく、すべての検定について合法との判決を言い渡しました。先に示したような第一審での審理の内容経過からみても、きわめて説得力を欠く判決であり、司法の責任を放棄した判決といわざるを得ません。
 すでに1997年、貴最高裁判所において、家永教科書訴訟に閲し、検定の一部違法を認める判決が確定しております。文部科学省が行う検定が常に誤りなく行われているというのは、もはや神話に過ぎません。したがって、教科書検定が合法か違法かについては、個別に慎重な審理が求められるところです。
 よって、貴最高裁判所が、本件東京高等裁判所判決を破棄し、あらためて本件検定の違法性について審理をやり直すとの判断を示されるよう要請いたします。
2004年7月31日
                          歴史教育者協議会第56国大会会員総会

与党の教育基本法改正協議会中間報告を批判する

 自由民主党と公明党間で設置している教育基本法改正協議会は、6月16日に中間報告を発表した。この報告は、第一に前提として「教育基本法の改正案は、議員立法ではなく、政府提出法案である」ことを明確にしている。したがって政府案をつくる土台という位置づけを持っているものといえよう。
 第二に「改正方式については、一部改正ではなく、全部改正である」としている。これは政府・与党が教育基本法の「全面的な改正」を目指していることを示している。したがって、私たちはこれが中間報告とはいえ、「教育基本法改正」に向けた基本的なスタンスを示したものととらえなければならないと考える。
内容については未だ全貌は示されていないがきわめて重大な「改正」を目論んでいるいることがうかがえる。その第一は現行法前文中の「日本国憲法の精神に則り」という箇所を削除しようとしていることである。これは日本国憲法を無視したものとして看過することが出来ない。同時に「日本国憲法の精神に則り」という立場は教育基本法の精神を具体化する際の根幹であり絶対に変えてはならないものである。
 第二に現行法の「平和的な国家及び社会の形成者」を「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する」と変えようとしていることについてである。昨今、東京都などで行われている「日の丸・君が代」の強制を法的根拠をもって実施する道につながることが危惧される。
 第三は、現行法が「ひとしく教育を受ける権利」という教育の機会均等の原則を示しているのに対して「能力に応じ」た教育をめざしているところにある。これは「9年間の義務教育」を「法律の定める期間」として「多様な教育制度」を企図する動きとも関連している。これでは財界などが求める「能力主義教育」を採用し、戦後、教育基本法の具体化としてすすられてきた「どの子も大切にする教育」の崩壊を招くものとなろう。
 第四に根底となる問題は、現行法「教育は不当な支配に服することなく」とされている箇所を「教育行政は不当な支配に服することなく」と変えようとしているところにある。現行の教育基本法十条は戦前の国家主義の誤った教育が子どもたちの人権を無視し国策による教育を行った反省から生まれたものである。そうした行政による教育への介入を禁じた規定を本末転倒して変えようとすることは再び子どもたちを国家の従属物にしようとするものに他ならない。
 私たちは、与党の教育基本法改正協議会中間報告の危険な内容を断じて認めることが出来ない。そして教育基本法の見直しではなく、それを活かす教育こそ大切であることを改めて指摘するものである。同時にこうした「教育基本法改正」に危惧を持つ多くの市民・教育関係者とともに連帯して教育基本法を守るために行動する決意を表明する。

2004年6月27日
歴史教育者協議会常任委員会


大学入試センター試験問題への不当な政治的圧力に抗議する

 今年の大学センター試験の世界史で朝鮮半島からの「強制連行」を正解とする出題があった。これに対して1月23日に「新しい歴史教科書をつくる会」が当該問題を採点から除外することを求める要望書を文部科学省に提出した。さらに自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は2月13日と26日の総会に文部科学省と大学入試センターの関係者を呼んで、「出題者を公表せよ」と迫り、その際、文部科学省は「公表する」と約束したことが報道されている。
 もし、上記のことが事実ならば文部科学省と大学入試センターが一部の政治家による教育への介入を認めたことになる。これは教育基本法第十条に違反した不法行為を行ったことになる。こうしたことが許されるならば、大学入試の中立性・公正性が失われるきわめて重大な事態といわなければならない。
 そもそも今回の事件の発端は「新しい歴史教科書をつくる会」が「強制連行」は存在せず「国民徴用令」による合法的な行為で入試問題の誤りだとしたことにあった。そうした主張はこれを機会に教科書から「強制連行」を削除し、「強制連行」を記述しない「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を来年の検定で合格させ、あわせて普及しようとするねらいからなされているものである。
 しかし、アジア太平洋戦争期に侵略戦争を遂行するために植民地であった朝鮮半島の人たちに「国民徴用令」を適用し、日本本土の労働力不足を補うために「強制」して動員したことは事実である。地下壕堀りやダム建設現場それに軍需工場などで過酷な労働条件で働かせ、朝鮮半島から「強制連行」されてきた多数の人たちの命も奪われた事実はすでに明らかにされている。小泉首相も昨年12月の国会答弁で「当時多数の方々が不幸な状況に陥ったことは否定できないと考えており、戦争という異常な状況下とはいえ、多くの方々に耐え難い苦しみと悲しみを与えたことは極めて遺憾なことであった」と述べている。そうした点からみても今回の入試問題そのものが誤りなどではない。同時に教科書の内容として「強制連行」を記述することも必要なことである。
 従って、「強制連行」を問題化し「出題者を公表せよ」などという言いがかり自体が事実に基づかない誤った歴史認識によるものであることが明らかである。文部科学省の「氏名公表」の動きに抗議すると共に撤回を求めるものである。同時に文部科学省ならびに大学入試センターは歴史の真実に謙虚な態度で望み、毅然として、不当な圧力に屈服しないよう強く要求する。
                                   2004年4月8日
                                   歴史教育者協議会


米英などのイラク侵略戦争に抗議し戦争の即時停止を求める決議

 3月20日、米国は巡航ミサイルとステルス機を投入しイラク侵略を開始した。この間、世界60カ国の1000万人を越える人々の「反戦・平和」への運動は、かつてないほどの規模で全世界に広がった。国連安全保障理事会の多数の国、世界の圧倒的多数の国々も武力攻撃に反対し、平和的解決の道を真剣に追求してきた。今回の攻撃は、こうした諸国民の願いをふみにじり、また、平和的解決への諸国家の努力に対する悪辣な挑戦であり断じて許すことはできない。
 将来発生するかもしれない武力攻撃に備えて、先制攻撃をするという論理は、明らかに国連憲章違反であり、このような論理を認める国際法原理は存在しない。また、大量破壊兵器の廃棄が目的だとして行われた武力行使は、フセイン政権の打倒こそが真のねらいであったこともはっきりしてきた。これも、主権尊重・内政不干渉を定めた国連憲章の明白な違反である。したがって、米英などのイラク攻撃は国連憲章に違反する明白な侵略戦争といわなければならない。このような行為は、戦争の違法化、国際紛争の平和的解決、非暴力の国際秩序の確立を目指してきた20世紀の国際社会の歴史を完全に逆行させ、ふたたび暴力が横行する世界に逆戻りさせるものであり、人類の歴史に対する重大な犯罪行為である。
 国連安全保障理事会は、今回の戦争の根拠となるいかなる決議もおこなっていない。米英などのイラク侵略戦争は、成立以来50有余年、さまざまな問題点を指摘されながらも諸国民の努力によって営々と築きあげてきた国際平和組織である国連をないがしろにするものであり、このようなならず者的行動は決して認められるものではない。
 20世紀に、人類は二度の大戦を経験した。罪なき多くの人々の尊い命が奪われ、莫大な数の人々は戦中・戦後に辛苦にまみれた生活をおくらねばならばならなかった。人類は、過去の歴史に学び、21世紀こそ平和な時代にという人類共通の願いを実現しなければならない。
 小泉内閣と与党三党の責任は重大である。国民への説明責任を果たさず、「北朝鮮脅威論」を喧伝し、ひたすら米国への追従と迎合、戦争支援に終始してきた。日本国憲法第九条に明記されている「戦争の放棄」「武力行使の禁止」を踏みつけにし、唱え続けた国連中心主義を棚上げし、圧倒的多数の戦争反対の世論に対しては利敵行為とまで非難した。
 このような小泉内閣と与党三党の行為に強い怒りをもって抗議するとともに、イラク侵略戦争に加担する行為をただちに中止し、多数の住民の生命を奪いつつある戦争を一刻も早く停止させるために、日本国憲法の理念にもとづき積極的役割をはたすよう要求する。また、米英などの侵略国家に対し、戦争の即時停止と問題の平和的解決を強く要求する。
                               2003年3月29日
                               歴史教育者協議会全国委員会


教育内容への不当な介入に抗議する

 教育基本法第10条(教育行政)は「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し、直接に責任をもって行われるべきものである。2 教育行政は、この自覚のもとに教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない」と規定しています。
1999年の「国旗・国歌法」の成立以後、加速度的に憲法・教育基本法を無視し、学校教育に強制と管理強化が広まっています。一方、世界における教育の流れは、子どもの権利条約の精神にある「子どもの最善の利益」のために、自主的な教育活動を求めています。先頃、国連・子どもの権利委員会は、その立場から日本政府へ細部にわたる改善の勧告を出しました。そもそも教育は真理と真実に基づいて行われるべきで、特定の考えを押しつけてはなりません。問題に対しては、教育の条理に基づく教育論議を深めて解決すべきです。今の日本の教育は世界の流れに逆行し、トップダウン・上意下達の戦前の教育を想起させる行政権力の教育への不当な介入が連続しておきています。
宮崎県の高校3年生が、武力によらないイラク復興支援を求める署名を提出したことへの小泉首相、河村文部科学大臣の対応は許しがたいものです。小泉首相は署名の内容も読まずして「自衛隊は平和貢献をするんですよ。学校の先生も、もっと生徒に教えるべき」と述べました。子どもの意見表明権を踏みにじっただけでなく、行政の長としての教育内容への介入です。河村大臣は「高校の公民の学習指導要領で、日本の安全保障の問題を理解させるよう明記されていること」をあげて「自衛隊が何の目的で行くのか、高校生なりに理解してもらう必要がある。(派遣の)法的な根拠もあり、きっちと教えてもらいたい」と述べたと報じられています。どちらも自衛隊のイラク派兵という最も政治的な焦点となっている問題について、政府見解を一方的に押しつけるという教育への不当な介入です。 石原都政のもとでの公立学校への日の丸・君が代の強制と処分の問題も公教育への不当な介入です。ある都議の「七生養護学校では、いきすぎた不適切な性教育が行われている」との質問に、教育長は「不適切な性教育」と即答しました。子どもの現状から出発し、父母の合意を得つつ教職員が創造した性教育に対して不適切ときめつけ、事情聴取を行い、前校長他116名の関係した教員の処分に到りました。
 教育基本法第2条に「教育の目的を達成するには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的な精神を養い」「文化の創造と発展に貢献するよう努める」とあります。私たち歴史教育者協議会は、社会科教育を通して、子どもたちに「平和的な国家および社会の形成者」としての力を身につけさせたいと願ってきました。事実をきちんと教え、その事実に基づいて子どもたちが社会に対する科学的な認識を育て、自主的な判断ができるよう努力してきました。それゆえ、行政権力による教育への不当な介入に抗議するとともに、日本政府および自治体が憲法・教育基本法・子どもの権利条約に基づく教育行政を行うことを強く求めるものです。
                             2004年3月28日
                             歴史教育者協議会全国委員会


2005年を前に、「つくる会」教科書の採択を阻止し
教科書と教育の危機に立ち向かおう

 2005年、全国一斉に中学校教科書の採択が行われます。「新しい歴史教科書をつくる会」とそれにつらなる勢力は、それにむけていまさまざまな策動を重ねています。
 その第1は、教科書検定基準にある近隣諸国条項の撤廃を要求する署名運動や県議会決議の動きです。それによって、前回は「つくる会」教科書にやむなく書き加えた一定の加害の記述を、今度は一切書かないまま検定に合格させると同時に、他の教科書からも侵略加害の記述を削除させることをねらっています。最近おこった「強制連行」にかかわるセンター入試問題に対する右翼政治家と一体となった乱暴な介入、問題作成者の氏名公表の要求なども、政治的圧力によって、すべての教科書から「強制連行」などの記述を削除させることを意図したものです。
 第2は、採択制度や採択地区の編成を、「つくる会」教科書の採択にいっそう有利となるよう改変しようとする動きです。政治的圧力によってそれが実現するならば、現場教員が採択からいっそう排除されることになります。
 第3に、都道府県教育委員会に全国の力を集中して圧力をかけ、この間行われる新設の都道府県立中高一貫校で「つくる会」教科書を採択させようとする動きです。2003年度まででは、愛媛を除きこの策動はすべて失敗しましたが、2004年度の東京都立の台東地区中高一貫校の採択はとくに重視する必要があります。なぜなら石原知事は、三浦朱門、米長邦雄氏らを同校の顧問に任命し、万全の体制をもってのぞんでいるからです。
 しかし今日の教科書・教育の問題は、これらの「つくる会」の策動だけにとどまるものではありません。教科書問題の根底には、教科書のありかた、いまの学習指導要領とそれにもとづく教科書検定のありかた、そして採択制度の問題があります。この点では、各教科の研究団体や自然科学系の学会なども含め、大きな共同のとりくみがはじまっています。
 このような情勢のなかで、私たちはただちに次のようなとりくみを開始しましょう。
教科書において歴史の事実を隠蔽したり歪めたりするあらゆる動きに機敏に反対しましょう。
2004年の小学校教科書採択のときから、現場教員の意見が正しく反映される民主的な採択制度に改善する運動を強めましょう。
2004年の中高一貫校の採択、2005年の全国一斉採択で、圧倒的多数の市民・保護者などに訴え、学習を重ね、大きな世論の力で「つくる会」教科書を1冊も採択させないようにしましょう。
現行の学習指導要領と教科書の問題点、教科書検定と採択制度の問題点を、だれにでもわかりやすい形で広く市民・保護者に明らかにし、学習指導要領と教科書を変える大きな運動をつくりあげましょう。
 歴史の事実を歪め、未来をになう子どもたちに誤った歴史認識・社会認識を植えつけようとする右翼政治家などの策動は、マスコミの情報操作・世論操作に支えられていっそう勢いづく危険をはらんでいます。それを一挙に憲法・教育基本法改悪へつなげようとする動きも強まっています。こうしたなかで、私たちは、今日の教育・教科書の危機をのりこえ、新たな道をきりひらくために、目的を同じくする多くの団体・個人や、憲法・教育基本法改悪に反対する運動とも手をむすんで、それぞれの地域から大きな運動をつくりあげていきましょう。
                               2004年3月28日
                               歴史教育者協議会全国委員会


国立大学法人法の強行採決に抗議し、
教育基本法の改悪を許さない運動を広げよう!

通常国会には、教育基本法の改悪につながる国立大学法人法案が出され、十分な審議をしないまま政府・与党の数の力で可決してしまいました。この法律は、国家が国立大学の自治を奪い教育内容に公然と介入する道を開いたものです。各方面からの批判に答えず、「来年4月に法人化」をという政府の日程のみ優先させ成立させた政府・与党に対して抗議するものです。
この法案に対しては、大学関係者をはじめとする広範な反対運動もおこりました。そうした動きを受け、政府・与党は国立大学法人法について、「(総務省)は大学本体や学部等の具体的な組織の改廃、個々の教育研究活動については言及しない」ことなど23項目にも上る異例な「付帯決議」をつけざるを得ませんでした。こうした矛盾は法律の施行過程でさらに深刻化するものとなるでしょう。私たちは、大学の自治と学問の自由を守るため新しい闘いを展開することが求められています。
 私たちは、国立大学に対するこうした動きが教育基本法改悪につながるものととらえ、それを阻止する運動を展開することも必要です。政府・与党は、次の通常国会に教育基本法改悪案を上程する動きだと伝えられています。中教審が「教育基本法見直し」を打ち出してから、それが一部のエリートを育成するものであること、また、「愛国心」の強要によって国家や企業に忠誠を誓う時代錯誤のものであること、さらに今まで進めてきた子どもの権利保障を前提に平和と民主主義をめざす教育を破壊するものであるという批判が国民の中から湧き起こっています。「多彩な意見広告」運動などはその一例です。
 私たちは、日本国憲法と教育基本法を活かす教育こそ大事だと考えます。自由民権運動の発祥の地である高知で私たちは「自由と民主主義」を大切にし、子どもにとって最善の教育をさらに発展させることを心から決意し、教育基本法のいかなる改悪も阻止するためにいっそう、運動を広げましょう

2003年7月31日
歴史教育者協議会第55回高知大会会員総会


イラク復興支援特別措置法の強行成立に抗議し、
その発動を許さない決議

7月26日、政府・与党はイラク復興支援特別措置法を成立させました。大量破壊兵器は未だ発見されていないばかりか、最近のメリーランド大学の世論調査によれば、米政府が示した証拠を正確な事実だったと答えた数は32%にすぎず、「事実の誇張」「誤った情報」ととらえた米国民は62%に達しています。声高に世界に発信された戦争の大儀は揺らぎ、世界的に批判の声は高まっています。政府・与党はこうした動きに目を背け、多くの国民の反対を押しきり、かけ足審議で強行成立に持ち込みました。このやり方は決して承認できるものではありません。
 また、「非戦闘地域を指定することなど不可能である」とか「自衛隊員が殺されることもあるかもしれない」という首相の無責任な発言を断じて許すことはできません。カンボジアからアフガニスタン・イラクへと自衛隊の行動範囲を広げ、集団的自衛権の行使に踏み込むことは、日本の軍事大国化が新たな段階に達することを意味しています。
 戦後半世紀をとうに過ぎ、この間、私たち日本国民は日本の軍人が外国へ出かけていって、武力紛争によりその国の人を一人として殺傷したことがないということを誇りにしてきました。イラク特措法は、憲法の原理に違反し、イラク戦争開始前から世界中にわきおこった反戦平和運動の歴史的高まりと、それを反映した国際法の原理を重視する世界各国の動きにも反するものであります。
 日本国憲法を守り、世界の平和の実現のためにも、イラク特措法の発動を許さない決意を表明します。

 2003年7月31日
歴史教育者協議会第55回高知大会会員総会


世界遺産・平城宮・京跡を高速道路計画から守る決議

 1998年12月、日本の宝物から、世界の宝物として世界文化遺産に登録された平城宮・京跡が、戦後三度目の大きな危機を迎えています。
 国土交通省によって、京奈和自動車道大和北道路のルート決定のための調査・検討が「初めに平城京・宮跡通過ありき」で強行されようとしているのです。昨年、地下水検討委員会は、地下トンネル案を可と報告し、引き続く文化財検討委員会も、平城宮跡「直下を避けよ」といいつつもトンネル案を容認しました。
 そして昨秋から、「公平・中立」「住民参加」とのポーズを大宣伝しつつ、PI方式による有識者委員会が設置され、「今夏ルートのたたき台を出したい」(同委員会)と、事態は急迫しています。同委員会は、すでにいずれのルートも古都奈良の世界遺産エリアを通過する「4ルート6案」を「委員会案」として提示し、「計画決定」にむけ強行しようとしています。
 私たち歴史教育者協議会や日本考古学協会、木簡学会など多くの研究団体・市民が、その政府の「強硬姿勢」に懸念を表明し、守る運動は大きな広がりのなかにあります。
 しかも、今世界が注目しています。この7月パリで開かれた第27回世界遺産委員会会議に、私たちは「高速道路から世界遺産平城京を守る要請団」を送り、ユネスコ本部等での宣伝活動とともに、「日本政府の報告」を批判・摘発する「NGOレポート」を配布して、会議に参加しました。
 その結果、世界遺産委員会会議は、日本政府に対し「遺産の真実性と完全性の保全を保証する努力」を強く要請することになったのです。
 10世紀を越えて、平城京・宮跡は守られて来ました。私たちは、次代の子どもたちにその保全と継承を熱く受け継ぐ決意をこめて決議するものです。
1.地下トンネル案は、地下水位の変化により、木簡をはじめ、多くの遺物や遺構が腐滅の恐れがあります。
2.地上案とした場合も、宮跡は避けたとしても、奈良市街中心部や隣接するルートとなり、排気ガスや振動・騒音など風致警官や環境の破壊、市民生活や文化財に深刻な悪影響を及ぼすことになります。
 以上の点から、私たちは、京奈和自動車道の世界遺産・平城京・宮跡通過に強く反対するものです。

   2003年7月31日
歴史教育者協議会第55回全国大会会員総会


2003年4月11日
文部科学大臣   遠 山 敦 子 様

歴史教育者協議会
委員長  佐 藤 伸 雄

外国人学校卒業生の国立大学受験資格の一部改正に関して
(意見)

 本会は、小・中・高校の教員及び大学研究者からなる民間の歴史教育・社会科教育の研究団体です。1949年の創立以来、日本国憲法と教育基本法に基づく教育の推進のために研究と教育実践を進めています。
これまでの活動の主旨に基づき、標記の件につきまして、以下に本会としての意見を申し述べます。
 今回の改正に於いて、文部科学省は、外国人学校卒業生の国立大学受験資格をこれまで「高校卒業者と同等の学力あると認められる者」としてきた指定条件を緩和し、欧米系のインターナショナルスクールの卒業生には認める方針と伝えられています。
本会は、それに対して朝鮮学校をはじめ韓国学園、中華学校などアジア諸国の民族学校卒業者に対しても無条件で受験資格を認めることを要求します。
理由は、以下の通りです。
1、文部科学省は、欧米系のインターナショナルスクールのみを英米にある民間の評価機 関によって認証を受けていることを理由に国公立大学受験資格を認めるとしています。 これでは、すでに歴史的実績をもつアジア系の民族学校を差別することになります。
2、日本国政府はこれまで韓国・朝鮮および中国に対して「不幸な関係」があったことを 認め、謝罪してきました。そうした立場から見ても日本語と彼らの母国語とを理解し、 将来、日本とアジアの交流にとってかけがえのない教育を受けている民族学校を排除す ることは許されないことです。大学受験資格の規制緩和にあたっては、そうした民族学 校こそがその対象になるべきだと考えます。
3、民族学校を学校教育法第一条への移行を求める意見は、すでに日本弁護士連合会など をはじめとする各団体から要請されてきたものです。にもかかわらず、欧米インターナ ショナルスクールにのみ認めるという方針は、時代の流れに逆行しているといわざるを 得ません。
4、日本に住み、日本の大学で学ぼうとする民族学校の生徒に対して、その希望を認めな いならば、将来のアジアの人々との友好関係を築く上で、大きな禍根を残すことになり ます。
歴史教育者協議会としては、以上の諸点から、「改正」方針の変更を求めるものです。


中教審の教育基本法改悪の答申に反対する決議

 中央教育審議会は、3月20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(答申)を文部科学大臣に提出した。答申は、明確に教育基本法の改悪を求める内容となっている。これは、子どもたちの未来にとって取り返すことの出来ない弊害をもたらすものであり絶対に容認できない。私たちは、答申にもとづく教育基本法「改正」に強く反対する。
第一に、答申は教育基本法を「改正」する理由として「心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げている。これは、教育基本法の基本理念と明確に異なる立場を求めているものである。すなわち、教育基本法は戦争の反省から平和な国際社会を形成する人間を育成する目的で創られたものである。ところが、答申がいう「たくましい日本人」とは、それと反し「大競争時代」に生き残るための「日本人の育成」を目論むものである。教育基本法のいう、「人格の完成」という教育の条理を逸脱し、偏狭なナショナリズムによって教育をゆがめるものである。あわせて、政府が周辺事態法を制定し、有事法制を準備して「戦争ができる国」に変えようとしている今日、これは戦争に積極的に参加する子どもたちを育成することに通じることが危惧される。
第二に、答申は、「たくましい日本人の育成」のために「日本人であることの自覚」「郷土や国を愛する心」を教育の理念に盛り込もうとしている。「愛国心」を法律に持ち込むことは自体、日本国憲法の保障する「思想・良心の自由」にも反するものであり、認めることはできない。さらにこれは、今日の多民族・多文化を認め合おうとする国際社会の動向に反すると同時に教育基本法のいう「個人の尊厳」を否定するものである。
第三に、答申は「個性に応じた教育」という名のもとに能力主義・競争主義による教育の再編を「時代の要請」だとしている。しかし、それは、国家や企業に役立つ一部のエリートの育成と弱者切捨ての論理による教育の再編を目論むものであり、教育を受ける権利を保障した日本国憲法や教育の機会均等を保障した教育基本法の理念を根本的に歪めるものである。
第四に、答申は、教育基本法の男女共学規定を「削除することが適当」とし、「家庭の責任」「家庭の役割」を明記すべきだとしている。これは男女共同参画社会づくりに逆行するものであると同時に家庭教育などにまで政治が介入することに道を開くものである。
第五に、答申は、教育基本法に「教育振興基本計画の策定の根拠を規定することが適当」としている。政治を担う一つの内閣が策定できる計画を教育基本法に位置付けること自体が問題である同時に今回の答申内容自身に政治が介入する内容が含まれている。また、答申は「『必要な諸条件の整備』には、教育内容も含まれる」としている。これは教育基本法第十条で禁じている国家の教育内容への支配・介入にあたる。教職員に対する管理統制をを強化し、教育内容に公然と介入することは国民の教育権を否定し教育基本法そのものの基本理念を否定した改悪につながるものである。
そもそも教育基本法は、日本国憲法の理念を実現することをめざした準憲法的な性格を持つものであると同時に教育の憲法の性格を有しているものである。その改廃は、文部科学省の一つの審議会が提起できるものではない。私たちは、答申にもとづく教育基本法「改正」の法案化の動きに反対すると同時に教育基本法を活かす取り組みを進めることを決意するものである。
                                  2003年3月29日
                             歴史教育者協議会全国委員会


米英などのイラク侵略戦争に抗議し戦争の即時停止を求める
決議

 3月20日、米国は巡航ミサイルとステルス機を投入しイラク侵略を開始した。この間、世界60カ国の1000万人を越える人々の「反戦・平和」への運動は、かつてないほどの規模で全世界に広がった。国連安全保障理事会の多数の国、世界の圧倒的多数の国々も武力攻撃に反対し、平和的解決の道を真剣に追求してきた。今回の攻撃は、こうした諸国民の願いをふみにじり、また、平和的解決への諸国家の努力に対する悪辣な挑戦であり断じて許すことはできない。
 将来発生するかもしれない武力攻撃に備えて、先制攻撃をするという論理は、明らかに国連憲章違反であり、このような論理を認める国際法原理は存在しない。また、大量破壊兵器の廃棄が目的だとして行われた武力行使は、フセイン政権の打倒こそが真のねらいであったこともはっきりしてきた。これも、主権尊重・内政不干渉を定めた国連憲章の明白な違反である。したがって、米英などのイラク攻撃は国連憲章に違反する明白な侵略戦争といわなければならない。このような行為は、戦争の違法化、国際紛争の平和的解決、非暴力の国際秩序の確立を目指してきた20世紀の国際社会の歴史を完全に逆行させ、ふたたび暴力が横行する世界に逆戻りさせるものであり、人類の歴史に対する重大な犯罪行為である。
 国連安全保障理事会は、今回の戦争の根拠となるいかなる決議もおこなっていない。米英などのイラク侵略戦争は、成立以来50有余年、さまざまな問題点を指摘されながらも諸国民の努力によって営々と築きあげてきた国際平和組織である国連をないがしろにするものであり、このようなならず者的行動は決して認められるものではない。
 20世紀に、人類は二度の大戦を経験した。罪なき多くの人々の尊い命が奪われ、莫大な数の人々は戦中・戦後に辛苦にまみれた生活をおくらねばならばならなかった。人類は、過去の歴史に学び、21世紀こそ平和な時代にという人類共通の願いを実現しなければならない。
 小泉内閣と与党三党の責任は重大である。国民への説明責任を果たさず、「北朝鮮脅威論」を喧伝し、ひたすら米国への追従と迎合、戦争支援に終始してきた。日本国憲法第九条に明記されている「戦争の放棄」「武力行使の禁止」を踏みつけにし、唱え続けた国連中心主義を棚上げし、圧倒的多数の戦争反対の世論に対しては利敵行為とまで非難した。
 このような小泉内閣と与党三党の行為に強い怒りをもって抗議するとともに、イラク侵略戦争に加担する行為をただちに中止し、多数の住民の生命を奪いつつある戦争を一刻も早く停止させるために、日本国憲法の理念にもとづき積極的役割をはたすよう要求する。また、米英などの侵略国家に対し、戦争の即時停止と問題の平和的解決を強く要求する。
                                   2003年3月29日
                             歴史教育者協議会全国委員会


      小泉首相の靖国神社参拝に抗議する
 小泉首相は去る1月14日、三たび靖国神社参拝を強行した。私たちは、歴史を偽り、日本とアジアの戦争犠牲者の心情をふみにじり、かつ日本国憲法に公然と敵対し、アジアの平和に逆行する小泉首相の靖国神社参拝に厳重に抗議する。
 靖国神社は、戦前、軍が管理し、天皇のため戦争のために生命を捧げれば神として祀られると国民に教え、国民を戦争に動員するしくみのなかできわめて重要な役割をはたした施設である。この歴史的事実を無視してはならない。「二度と戦争をおこさないため」と称して、戦争遂行のための象徴的施設であった靖国神社に参拝し敬意を表することは、歴史を偽るものである。また、靖国神社は、遊就館の展示にみられるような、日本が行ったアジア侵略戦争をアジア解放と自衛のための正義の戦争と偽る特殊な立場から、A級戦犯を含む日本軍将兵を神として祀っている。このような神社に首相が参拝することは、日本政府がアジア侵略戦争を正義の戦争だとして歴史を偽造する立場に立つことを公式に表明することにほかならない。さらに、本人あるいは遺族の意志に反して強制的に靖国神社に合祀された日本およびアジア諸国の戦争犠牲者が存在し、訴訟も提起されている。小泉首相の靖国神社参拝は、国家の権力をもってこれら戦争犠牲者の心情をふみにじるものである。
 自民党とそれにつながる政治勢力は、歴史を偽る「つくる会」教科書の検定合格と採択のために大きな役割をはたし、すでにアジア諸国民からきびしい抗議をひきおこしたところである。小泉首相の靖国神社参拝は、こうした歴史の偽造のうごきをさらに押しすすめるものであり、アジアの友好と平和の構築に百害あって一利なきものである。
 日本国憲法は政教分離の原則を定め、国家が特定の宗教に関与することを禁じている。首相としての靖国神社参拝が憲法に違反することは、多くの裁判所の判決によっても明らかにされている。それを知りながら無視した小泉首相の行動は、日本国憲法に対する意図的な冒涜であり、憲法に敵対する行為といわなければならない。
 私たちはアジアの平和を求める。「二度と戦争を起こさないために」日本政府と小泉首相がやるべきことは、靖国神社参拝ではない。過去の戦争を真摯に反省し犠牲者に謝罪してしかるべき補償を行うこと、アメリカのイラク攻撃に反対しやめさせること、イラク攻撃支援のためのイージス艦を引き揚げること、戦争に国民を動員する有事法制を撤回すること、国のために戦争も厭わない国民づくりをねらう教育基本法改悪をやめることである。 戦争への道を絶対に許さず、アジアの人々とともに平和を構築する決意をこめて、私たちは小泉首相の靖国神社参拝に厳重に抗議し、二度と参拝を行わないことを約束するよう要求する。
                                2003年1月27日
                       歴史教育者協議会
                       委員長 佐藤 伸雄
                       170-0005東京都豊島区南大塚2-13-8千成ビル
                       TEL03-3947-5701  FAX03-3947-5790