震災と原発事故による被災者の救援と被災地の復興は、2年たった今も遅々として進んでいません。30万人を超える人々がまだ避難生活を余儀なくされています。家族や家、職や故郷を失った被災者の生活再建は、何をおいても早急に進めなければなりません。被災者・被災地の立場に立ったインフラの整備や産業の復興も急務です。
3月18日には、福島第一原発で停電がおきて冷却停止が長時間続き、事故の「収束」とはほど遠い状態であることが浮き彫りにされました。政府・東電は、原発事故の原因究明と事故の責任を明確にしなければなりません。放射能被害の賠償も遅れが指摘されています。東電は、加害者として誠実に問題解決にあたるべきです。
子どもの健康被害・内部被曝問題についても真剣な取り組みは進んでいません。子どもたちに安全・安心な環境を作り出すことは、大きな課題です。すべての子どもたちがすこしでも安心できるように健康診断を徹底し、早めの治療・対策ができるような援助・制度の確立が求められます。野外で安心して遊べない子どもたちへの長期・短期の集団疎開や保養の取り組みなどは、まだ実現していません。これらの問題を一部のボランティアまかせにせず、国や行政の本格的な取り組みが求められます。
文科省の放射線副読本は、水仙の花からも自然放射線が出ているといった写真をのせて自然界の放射線の存在を示したり、医療界でのレントゲンの有益性を強調したりして、少々の被曝は大丈夫だと教えるような内容になっています。これは自然放射線と人工放射線が人体に与える影響の違いをあいまいにし、医療をもち出して放射線の危険性を隠そうとするものです。しきい値がないといわれる内部被曝の危険性を教育の場で明確にして取り組んでいくことが大切です。子ども自らが放射線から身を守る実際的な手だてを含め、放射線教育の充実は急がなければなりません。
国民の願いや運動が十分に報道されない中で、原発再稼働が安易に進められようとしていること、エネルギー供給の実情、放射性廃棄物問題、被曝労働問題など、事実を正確に知らせることは欠かせません。それらを通して原発の危険性、脱原発とエネルギー問題などの認識を深め、さらに現代社会をどうとらえ、構築していくのかを考えさせる実践を、小・中・高・大と発達段階に合わせ、いっそう進めていきましょう。事実と向き合い主体的な学びを作り上げることを通じて、主権者としての力を育てましょう。
2013年3月31日
一般社団法人歴史教育者協議会臨時社員総会