声明
軍学共同を一層推し進める日本学術会議の法人化に反対し、法人化法案の撤回を求めます
昨年12月20日、内閣府に設置された「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」は、日本学術会議(以下、学術会議)を法人化するとともに、政権のチェックするさまざまな新たな制度を法律で定めるとした最終報告「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」を公表しました。
3月上旬に国会に提出予定「日本学術会議法案(仮称)」のおもな内容は、首相が任命する幹事、内閣府に設置される評価委員会、会員選定方針に関与する「選定助言委員会」についてです。これは日本の科学者を代表し、政府に対して科学的助言を独立して行う国の機関としての同会議の性格をなくすものです。「法人化」により財源の締め付けも予想されます。新会議発足(2026年)の委員選定は、「多様な関係者から推薦を求め」るとしており政府に都合の良い人選となる危惧があります。
学術会議は、1949年、前身である学術研究会議が、戦争に協力した過ちの反省の上に、政権から独立した国の機関として発足しました。学術会議は、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967年)、それを受け継ぐ「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年)を出しました。科学者として、二度と戦争に協力しない表明でした。
法人化論議の発端は、2020年菅内閣が会員6名の任命を拒否したことにあります。歴史教育者協議会は、2020年10月に任命拒否は学問の自由を侵害するとして、「菅首相による日本学術会議任命拒否に抗議し、撤回を求めます」との常任委員会声明を発表しました。政府は、この問題を「学術会議の在り方」とする法人化議論にすり替え、2022年制定「国家安全保障戦略」からは、軍学共同の推進と学術会議攻撃をおこなってきました。任命拒否に関しては未だに理由を説明せず、撤回もしていません。
学術会議法人化は、憲法に規定されている学問の自由、民主主義、平和の問題として、すべての市民に関わることです。憲法第23条「学問の自由」は、戦前の政府が大学の人事に介入し、体制に反対する研究者を追放し、戦争への道に突き進んだ反省から定められました。歴史教育者協議会は、学問の自由を侵害し、学術会議の独立性を奪い、政府の従属下に置く学術会議法の法人化に強く反対するとともに、法人化法案の撤回を求めます。
2025年2月23日 一般社団法人 歴史教育者協議会 常任委員会